個人の特性about
これまでに、心の健康に害を及ぼすストレスの正体や、ストレッサーを受けた時に私たちの体がどのように変化していくかを説明してきました。
ここでは、これらストレスがすべての人に同じ様に働くのかどうかを学んでいきたいと思います。
プラスとマイナスのストレス
ストレスというと、良くないものと感じてしまいがちですが、全てが悪いものではありません。ストレスがまるでない場合は、張り合いのない、つまらない人生になってしまうどころか、体温調節機能の低下がみられたり、暗示にかかりやすくなったり、幻覚・妄想をみるようになってしまうことなどが実験の結果分かっています。適度なストレスは、人間が成長を遂げるため、能力を伸ばすためのカンフル剤になるので、私たちにとって必要なものといえるでしょう。
つまり、ストレスには私たちの生活に必要なプラスに働く適度なストレスと、生きるエネルギーを押しつぶしてしまうような、マイナスに向かう過度なストレスがあるということです。
では、同じストレスがプラスに働いたりマイナスに向かったりするのはなぜでしょう。それは、ストレスの感じ方がストレスを受ける人により異なるからなのです。
例えば、目の前にある「ミルクが半分入っているコップ」をどう感じるかを考えてみましょう。
あなたはそのコップを、「まだ半分もミルクがある。」と感じますか、それとも「もう半分しかミルクがない。」と感じますか?
「半分もある」と感じた人は、コップ半分のミルクに満足し喜べる人であり、このタイプの人はプラス思考で、あまりストレスを感じずに暮らせる可能性が高いと考えられます。
逆に「半分しかない」と感じた人は、コップにたっぷり入っているミルクにしか満足を感じず、そうでない状態を不満の対象に感じやすいマイナス思考のタイプなのかもしれません。そういったタイプの場合はストレスを強く感じる可能性が高いといえます。
つまり、物事をどう捉えるか、そしてその処理の仕方によって、ストレスはプラスにもマイナスにも変わっていくのです。
ストレス耐性
ストレス耐性とは、ストレス状態に対する強さのことであり、その強さはそれぞれ個人により異なります。
ストレスに対する強さを決定する要素は、下の6つに分けて考えられています。
ー ストレス耐性の6要素 ー | |
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感知能力 |
ストレッサーがあった時にそれに気が付くか、気が付かないか。 いくらストレス状態になっても、それに無頓着であればストレスに耐えること(というよりは耐えるまでもなく気付いていない)は容易である。 これは性格や、体格などにも影響されると考えられている。 |
回避能力 |
ストレスをつくりやすい性格か否か。 例えば、少しくらいは人の言いなりでもいいと考えている人は、他人の勝手な指図に対してストレスを感じにくいといえる。 |
根本の処理能力 |
ストレスの原因であるストレッサー自体をいかになくせるか、または弱められるか。 ストレッサーに有効な処理(ストレス解消)を施すことができるならば、その人は結果的にストレス状態に強いことになる。 |
転換能力 | ストレッサーに出会い、ストレス状態に陥ったときに、そのストレッサーの意味を良い方向に捉え直したり、バネに変えられる能力があるか、否か。 |
経験 |
どんなストレッサーにどれくらい出会った経験があるか。 同じストレッサーに再び出会った場合、そのストレッサーに慣れ、ストレス状態になりにくいこともあるが、逆に耐性を弱めてしまうこともある。 |
容量 |
ストレスをどれくらい溜められるか。 ストレス状態の程度が、自分のストレス容量の許容範囲内ならばストレスをストレスと感じないでいられる。これはそのときの精神状況、身体状況などによっても異なる。 |
表でも分かるように、ストレス耐性はストレス解消のための行動によって変わります。
また、周囲の理解者、精神的支えになってくれる家族や友人の存在など、その人の置かれた状況などによって大きく影響を受けるということもあるのです。
つまりストレス耐性は、その人のもって生まれた性格や体質に加えて、環境や状況により大きく左右されるので、本人の努力や工夫次第で強くすることが可能といえるのです。
その方法については後に触れることとします。
ストレスを強く感じるタイプ
ストレスの感じ方は個人の性格にも左右されますが、中でもストレスを強く感じるタイプがあるということが分かっています。
そのストレスを感じやすいタイプの人たちの特徴を大きく4つにまとめてみました。
まじめで几帳面ないわゆる「模範的タイプ」 責任感が強く努力家で妥協知らずの完璧主義者。 最もストレスを感じやすいタイプの人。 |
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頑固で厳格な「自分勝手タイプ」 何事においても、他人の失敗が許せずその怒りがストレッサーになるタイプ。 自分の思いのままにならないと気がすまないわがままな人や、何でも頭ごなしに決めてかかる人などがこのタイプ。 |
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内向的でおとなしく嫌とはいえない「うなずきタイプ」 嫌なことでもはっきりNOと断れず、後になってもくよくよ悩んだりする自己嫌悪型がまさにこのタイプ。 ストレスがたまるのも当然でしょう。 |
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あれこれ気にしてばかりの「取り越し苦労タイプ」 ついあれこれ心配してしまい、心の休まる暇がないタイプ。 他人に気を使ってばかりいる人もこのタイプ。 |
このタイプの人たちは、他の人たちに比べるとストレスを感じやすいので、その状態が続くと病気につながる危険性が高いと考えられています。こういった傾向が思い当たる方は、普段からストレス対策を心がけるようにしましょう。
タイプAの行動パターン
また、ストレスを溜めやすい人たちは、共通の行動パターンをとるといわれています。
アメリカで行われた研究に基づいて、先進国において狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患になりやすい人にみられる行動パターンを「タイプA」と呼んでいます。
タイプA行動パターンの特徴は、
- 負けず嫌い人に負けたくなく、他人から認められたい気持ちが強い
- 頑張り屋非常に活動的で、常に仕事を早く片付けようとする
- 過度に競争的競争心が極めて高く、かなりの野心家
- 責任感が強いどんなことでもやりとげようという意欲が強い
- せっかちである 期限付きの仕事をたくさん抱えたり、いつも時間に追われている
- イライラしがち待つことやじっとしていることに我慢できなくイライラする
タイプAの「A」は、攻撃的・積極的という意味を持つ「aggressive」の頭文字をとったもので、会社で考えると出世の早い、いわゆる「やり手」と呼ばれている人たちに多くみられる行動パターンともいえます。
周囲の期待に応えるために頑張りすぎて、その無理から長期にわたる強いストレッサーがかかり、結果病気になると考えられますので、思い当たる方は特に注意が必要かもしれませんね。
生活上のストレス
下の表はアメリカのホームズ博士が考案したもので、日常の出来事に遭遇して心が疲れてしまったときから、心が元気を取り戻すまでにかかった時間を調べて点数化し上位の順から並べたたものです。
このデータは約40年前にアメリカで考案されたものですので、現代の日本にすべてが当てはまるとはいえません。しかし、「結婚」や「妊娠」等の喜ばしい出来事も環境や状況の変化につながり、ストレス度の高いものとして上位に入っていることが分かります。
1年間で、合計点が300点を超えるとストレスに関する病気にかかる危険度が高くなると考えられていますので、日常生活に置き換えながら参考にしてみてはいかがでしょうか。
少しずつストレスの傾向が分かってきましたね。
最後の項にチェックリストがありますので、あなたの「ストレスタイプ」をチェックしてみましょう。