健康管理情報

春の不調に関係がある“寒暖差疲労”とは

2025年3月号
更新)
季節の健康

気象庁のデータによると例年3~5月は、徐々に暖かい春を感じる日も多くなる一方で、寒暖差が最も激しい季節でもあります。このような季節の変わり目は急激な気温の変化に体が対応できず、ダルさやめまい、心身の不調を感じる状態を「寒暖差疲労」といいます。

今回は、今の時期に起こりやすい寒暖差疲労とは何か、その原因やメカニズム、さらに、気温の変化に適応するための春の体調管理について解説します。

そもそも寒暖差とは

寒暖差とは、1日の最高気温と最低気温の差や、前日との差、室内外の温度差が7℃以上あることをいいます。気温差が大きいほど体に不調が現れやすい傾向があるといわれています。

例えば、春の暖かくなり始める頃の「日中は暖かいのに対する」、「朝晩の冷え込み」、夏の「暑い外気温と冷房の効いた部屋との差」、その他、「秋から冬に向かう頃の寒暖差や前日比の気温差」などが挙げられ、特に季節の変わり目に生じやすい現象とされています。

寒暖差があるとなぜ疲れる?

通常、気温の変化に順応するために自律神経が働くことで体温を一定に保っています。

自律神経は、交感神経と副交感神経の2つからなり、内外からの情報や刺激に対して、自動的に反応し交感神経と副交感神経の切り替えが行われ、脳からの命令を臓器や筋肉などに伝えており、体温調整や心拍数、消化などの機能を本人の意志とは関係なく調節しています。しかし、急激な気温の変化が起こると、自律神経の働きが乱れ、体温調整や心身に影響を与えます。

自律神経と体温調整や心身への影響

私たちの体では、皮膚にある温度センサーで寒さや暑さを感じるとその情報が脳に伝わります。そして、脳の一番奥の視床下部に存在する体温調節中枢の命令により自律神経が働き、体温を約37℃に維持するために調整されています。

例えば、気温が高い時には体温を下げるために副交感神経が優位になります。そして、血管を緩めて血流を活発にし、発汗を促すことで放熱を促します。

一方で、気温が低い時には、交感神経が優位となり、血管を縮めて血流を滞らせ、毛穴を閉じることにより体温を逃がさないように働きます。さらに、骨格筋をブルブルと震わせ熱を作り出します。このようなメカニズムにより、多少の気温の変化であれば、対応することができます。

ところが、急激な寒暖差が繰り返し起こると、適応するために交感神経優位の興奮状態が続くようになり、やがて自律神経はバランスが取れなくなります。また、自律神経が過剰に働くことでエネルギー消費が増え、疲れやダルさを感じやすくなります。

さらに、交感神経の興奮が続くことにより、体の緊張状態も続き、血管が収縮し血流が滞り、疲労物質の排出も滞りやすくなります。結果として、寒暖差によって自律神経が乱れたことで、全身のダルさや冷え、めまい、頭痛や肩こり、胃腸の不調、イライラ感、不安、アレルギー症状をはじめとしたさまざまな不調を引き起こしたり、睡眠の質の低下を招くと考えられます。

春の体調管理のポイント

春の寒暖差に抵抗するための体調管理のポイントとして、自律神経の乱れを予防する方法をご紹介します。

体を内側から温めましょう

春を感じる陽気となり、冷たい飲み物が美味しく感じるようになりますが、体が冷えると血流が滞り、疲労感が溜まりやすくなってしまいます。温かいお茶やスープ、生姜など体を温める食材を摂り、体の内側から温めて血流をよくしましょう。

外出時は薄手の上着を持ち歩きましょう

春先は特に、朝晩の気温変化が大きくなるため外出時は、薄手の上着を持ち歩き、気温に合わせて調整ができるようにしましょう。大きめストールなどがあるとサッと首に巻いたり、羽織ることもできるので1枚あると便利かもしれません。

湯舟に浸かり、体の芯から温めましょう

入浴時は少しぬるめの温度(38~40℃)で湯舟に20分ほど浸かり、体の芯から温めましょう。湯舟に浸かることで、水圧と湯温によって血流がよくなり、疲労物質の排泄が促されます。体が温まり全身がほぐれることで眠入りやすくなります。さらに、入浴後、1時間ほどゆったりと過ごしながら寝る態勢を整えると、体温が徐々に冷めて、同時に眠気が誘発され寝入りをスムーズに導いてくれます。

睡眠時間をしっかりと確保しましょう

体のダルさや疲れを溜めないためには、質の良い睡眠も欠かせません。睡眠時間は6~7時間が理想的です体の芯が冷えていると眠りが浅くなりやすいため、就寝の約1時間前に入浴をするのがおすすめです。さらに、寝具や寝室の温度、照明など眠りやすい環境を整えることで副交感神経を優位にしやすくなり、疲労回復を促すことにもつながります。

バランスの取れた食事と腸内環境を意識しましょう

規則正しく1日3食バランスの取れた食事を心掛けましょう。特に、寒暖差に対抗できる体づくりのために抗酸化力のあるビタミンC免疫機能に関わるビタミンD、さらに免疫細胞が最も集まる腸をケアするために発酵食品乳酸菌飲料などを意識的に取り入ることも大切です。

適度な運動を毎日続けましょう

ウォーミング、ストレッチ、軽い運動を取り入れましょう。軽い運動は積極的休養と呼ばれ、あえて体を動かすことで血流を改善させ、適度に汗をかくことで疲労物質を効率的に排出させることができます。また、毎日続けることにより体温調整機能が向上しやすいといわれています。