生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
豊かな食生活、生活が便利になるにつれその代償として、さまざまな生活習慣病が問題となってきています。
生活習慣病とは、日常生活の不摂生を原因とする、病気の総称です。今回は、日本人の5~6人に1人が罹患しているとされ、国民病とも言われる『糖尿病』について解説していきます。
糖尿病とは、血液中に含まれているブドウ糖が異常に多くなりその結果、全身の様々な臓器などに障害が起こる病気です。通常、食事によって体内に入ったでんぷんなどの糖質は下の図のように消化されてブドウ糖となり、血液中から全身の細胞に取り込まれて、主なエネルギー源として蓄えられたり、使われたりします。血液中のブドウ糖を血糖と言い、血糖値とは血液中のブドウ糖の量を表しています。
食事で炭水化物を摂取すると、そのほとんどが消化によってブドウ糖となり、小腸から吸収されて血液に入るため、食後は血糖値が高くなります。健康な人の場合には、血糖値はインスリンという血液中のブドウ糖を筋肉や肝臓などへ取り込み、血糖値を下げる働きを持つホルモンによって、一定の範囲内にコントロールされています。そのため、食事や運動をしても極端に血糖値が変動することはありません。しかし、このインスリンの量や働きが低下した状態になっているのが糖尿病です。
インスリンとは、膵臓から分泌されるホルモンです。膵臓には、ランゲルハンス島と呼ばれる部分があり、その中のβ細胞(ベータ細胞)から分泌されます。ランゲルハンス島とはホルモンを分泌する直径0.1~0.2mmほどの細胞が集まってできています。
糖尿病は膵臓になんらかの障害が起きインスリンの分泌が不足したり、働きが悪くなると食べ物から消化・吸収されたブドウ糖が処理できず、血液中の糖分の濃度が高まります。そして、腎臓に運ばれ糸球体で濾過されたブドウ糖が尿細管で再吸収しきれず、糖が尿に出てしまいます。しかし、尿に糖が出ていても糖尿病でない場合もあるため、血糖値を調べる必要があります。
糖尿病は大きく分けて1型と2型の2つのタイプがあります。
①1型糖尿病
膵臓のランゲルハンス島のβ細胞が何らかの原因によって破壊され、インスリンの分泌能力が著しく低下している、あるいはまったく分泌されていないためインスリンの量が不足して発症します。30歳未満の若い人に発症率が高く、このタイプは注射などでインスリンを補う治療が必要です。
②2型糖尿病
日本の糖尿病患者の中でも最も多いタイプで10人に9人以上はこのタイプであるとも言われています。近年では若い人でも発症するケースがみられますが、40歳を過ぎてから発症することがほとんどです。
主な原因
過食、運動不足、肥満など生活習慣の乱れによるものが主な原因とされています。さらに、遺伝的要素によって発症する可能性が高まると考えられています。家族に糖尿病患者がいるなど遺伝的に血糖値が上がりやすい体質を持つ場合は肥満ではなくても糖尿病を発症する可能性があり注意が必要です。
糖尿病は、初期の段階ではほとんど自覚症状はなく、血糖値が極端に高くなると次のような自覚症状が現れます。
・空腹感や喉の渇きがひどくなる
・だるさや疲労感を感じやすい
・頻尿
・手足の感覚が鈍くなる
・傷口が治りにくい
・目がかすんだり、視力が低下する
・性機能の問題 など
※少しでも気になる症状がが思い当たる場合には早めに医療機関を受診しましょう。
糖尿病の特徴として、発症初期に自覚症状がみられないため、早期の発見方法として血糖値の検査を行います。一般的な健康診断の検査では、「空腹時血糖値」と「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」の検査が行われます。検査の結果両方が基準値を超えた場合は、糖尿病と診断されます。また、どちらか一方だけが基準値を超えた場合には後日再検査を行います。その他に、再検査では2つの検査に加え、「75g経口ブドウ糖負荷試験」や食事との関連を考えずに測定する「随時血糖値」の検査が行われることもあります。
空腹時に75gのブドウ糖を水に溶かして飲み、2時間後の血糖値がどのように変化するかで、糖尿病の診断をします。
来月のテーマは、「糖尿病とはどんな病気?②~合併症と糖尿病の予防法~」です。