生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
肥満という言葉は何となく身近な存在であるものの、いざどんな状態?と聞かれて説明することができますか?単に体重が重いだけでは肥満とは言いません。
今回は、肥満とはどんな状態で、どんなことに気を付けるのが大切なのか解説します。
肥満とは、単に体重が重いだけでなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態のことをいいます。つまり、病気を直接意味するものではないのです。
肥満の判定にはBMIや体脂肪率を用います。
①原発性肥満
食べ過ぎや運動不足などの生活習慣により、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回るため起こります。肥満の人の約90%がこのタイプに当てはまります。近年の食生活は、飽食の時代と言われ、簡単にいつでも食べ物が手に入ることによる摂取エネルギーの増加と、機械化による肉体労働の減少や交通機関の発達による消費エネルギーの減少などが肥満の原因となります。
①皮下脂肪型肥満
皮下脂肪は、下腹部、腰回り、お尻などの下半身の皮膚の下に蓄積されやすく、その姿から「洋なし型肥満」とも呼ばれます。皮下脂肪は、時間をかけて蓄積され、一度蓄積されると燃焼しにくいという特徴があり、女性や子どもにつきやすい傾向があります。
②内臓脂肪型肥満
内臓脂肪は、胃や腸の周囲にある腸間膜や大網と呼ばれる薄い膜に蓄積される。内臓の周囲に脂肪が蓄積するとウエスト周りがぽっこりと出てくるため、その姿から「りんご型肥満」とも呼ばれます。内臓脂肪は、蓄積されやすいが、燃焼しやすいという特徴があり、男性や閉経後の女性につきやすい傾向があります。
体を構成している成分のうち脂肪の量は状況に応じて変動します。
そして、体脂肪率とは脂肪が体に占める割合のことで体脂肪率が高くなると体重も増えます。
また、見た目や体重は標準、あるいはやせていても、体脂肪率の高い人もいて、これを「かくれ肥満」といいます。
BMI(ボディ・マス・インデックス)は、世界的に用いられている体格指数です。
スポーツ選手など、ハードに筋肉を鍛えているような人でない限り、体脂肪率と相関します。
また、BMI指数による標準体重の出し方は、{身長(m)×身長(m)}×22の計算式で算出できます。
18.5未満:低体重(やせ)
18.5以上~25未満:普通体重
25以上~30未満:肥満1度
30以上~35未満:肥満2度
35以上~40未満:肥満3度
40以上:肥満4度
日本肥満学会の基準では、25以上を肥満と定義しています。これは、男女ともにBMI指数が22であると病気にかかりにくく、25以上になると有病率が高くなるためです。そして、BMIが35を超えると高度肥満と判定されます。
肥満の状態が続くとさまざまな健康障害が起こるリスクが高まります。例えば2型糖尿病などの耐糖能異常や脂質異常症、高血圧、高尿酸血症などがあります。
BMI25以上で肥満と判定された上に、肥満によって健康障害がある人、あるいは、健康障害が起こりやすい内臓脂肪面積が100㎠以上を疑われ、腹部CT検査によって確定診断を受けた人は「肥満症」と診断され、治療が必要となります。
肥満症の治療方法には「食事療法」「運動療法」「行動療法」「薬物療法」「外科療法」の5つがあります。
中でも食事療法と運動療法が治療の基本となります。
①食事療法
体重を減らし体脂肪を減少させ、肥満にともなう数々の健康障害を改善することを目的に行います。
肥満症では、1日の摂取エネルギー量の基準を25㎉×標準体重(㎏)以下としつつ、医師や管理栄養士の指導を受け、摂取エネルギー量を設定します。
②運動療法
運動は、消費エネルギー量を増加させ、減量および筋肉量の維持に有効的です。ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動は、糖や脂質代謝の改善、血圧の改善や、糖尿病の発症予防にも効果的です。また、筋肉トレーニングは、減量中の骨格筋量の減少を抑制するだけでなく、糖や脂質の改善、血圧の改善効果があります。しかし、急に激しい運動をしてしまうと体に大きな負担となる可能性があるため、医師と相談しながら無理なく続けられる運動を選択しましょう。