生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
前回の記事では、肝臓の働きと健康診断で行われる肝機能検査の目的や見かたなどを解説しました。
今回は、肝機能異常によって引き起こされる具体的な病気について解説します。
肝臓の障害で最も多い病気は肝炎です。その中でも、ウイルスに感染して起こるウイルス性肝炎が日本では最も多くなっています。また、肝障害を起こす原因としてアルコールや薬物の副作用によるもの、自己免疫の異常によって起こるものなどがあります。
近年、注目されているのはアルコールをほとんど飲まないにも関わらず、アルコール性の肝臓障害と同様の脂肪肝などを引き起こす、「非アルコール性脂肪性肝疾患」と、進行して肝炎を起こしている「非アルコール性脂肪肝炎」の2つです。これらは、メタボリックシンドロームと関連があるとされており、生活習慣病の見直しが非常に重要です。
肝炎を病状の結果や進行具合によって分類すると3つに分けることができます。
短期的に肝臓に炎症が起こる病気です。
原因には、ウイルス性、自己免疫性、薬物性など様々なものがありますが、基本的には自然治癒します。しかし、一部の人は(1~2%)は重症化し、劇症肝炎(急性肝不全)と呼ばれる重篤な病態に移行します。
肝臓の炎症が最低6カ月以上持続する病気です。 一般的な原因としては、B型およびC型肝炎ウイルス、特定の薬などがあります。 多くのの場合は無症状ですが、全身のけん怠感、食欲不振、疲労などの漠然とした症状がみられることがあります。 慢性肝炎は、肝硬変の他、最終的には肝臓がんや肝不全に進行することがあります。
劇症肝炎は、肝臓の機能がある日突然、全く機能しなくなってしまう病気です。はっきりとした原因が分からないことがほとんどで、救命率は30%前後と低い病気です。また、特徴的な症状に、「肝性脳症」と呼ばれる重篤な意識障害があります。意識障害を起こし、崔あいくの場合には死に至るケースもあります。
肝炎ウイルスに感染し、肝機能障害が引き起こす病気で、日本人でも最も多い肝臓病です。肝炎を引き起こすウイルスには、A型、B型、C型、D型、E型などがあり、原因となるウイルスによって「〇型肝炎」と分類されます。その中でも、日本人に圧倒的に多く見られるのがB型肝炎とC型肝炎です。
<B型肝炎>
成人になって感染した場合、一部の人は急性肝炎を発症しますが、基本的に慢性化することなく完治します。母子感染などで感染した場合は、肝臓にB型肝炎ウイルスがすみつき、感染が持続することによりB型肝炎が慢性化します。やがて、病気が進行して肝硬変、肝がんへ進展する場合があるとされています。
<C型肝炎>
感染すると、一部の人は急性肝炎を発症しますが、多くの人は特に自覚症状が現れません。いずれも、自然に鎮静化し、この内約3割の人は自然に完治します。しかし、残りの7割の人は肝臓にC型肝炎ウイルスがすみつき、症状が出ないまま慢性化していきます。そのまま放っておくと肝硬変や肝がんへと進展する人も少なくありません。B型肝炎よりも慢性化しやすく、肝硬変や肝がんへと進行しやすいとされています。
アルコールを全く飲まない、あるいはほとんど飲まないにも関わらず、肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積されてしまう脂肪肝のことです。原因としては、肥満、内臓脂肪型肥満、糖尿病などの生活習慣病と大きく関係があることが分かっています。
肝臓に過剰な脂肪が蓄積したことにより肝細胞に障害が起こり、炎症や線維化が見られます。NAFLDと同様に生活習慣病との関連があります。
薬の副作用によって肝臓に障害が起こる。
何らかの免疫の異常により、自分自身の肝細胞を破壊してしまう病気です。中年以降の女性で発症することが多いと言われています。
肝臓病の予防のためには、生活リズムや食事バランス、アルコール摂取の仕方などを見直すこと大切です。意識したいポイントをご紹介します。
・食事は3食バランスよく、よく噛んで食べる。
・平日休日問わず、規則正しい生活リズムを意識する。
・十分な休息と睡眠を取る。
・適度な運動習慣をつくり、肥満を予防する。
・余分な薬やサプリメントなどは避ける。
・禁煙、節酒をする。