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肝機能検査で分かること

健康診断・生活習慣病

年1回健康診断を受けている方は多いかと思います。そして、たくさんある検査項目の中で「肝機能検査」とは一体どのような目的で行われいるかご存知でしょうか。検査結果が戻ってきて、肝機能の異常を指摘されたけど放置してまっている・・・なんて方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、健康診断の基礎知識として「肝機能検査」の目的やどんなことが分かるのか、そもそも肝臓はどのような働きをしているのか解説します。

肝臓とはいったいどんな臓器?

肝臓は、右の肋骨に守られるようにして存在し、人体の中で脳に次いで2番目に大きな臓器です。大きさは、成人で約800~1,200gくらいあります。体内にある化学工場などと呼ばれており、食べ物で吸収した栄養素の消化吸収や解毒など、500以上の働きをしており、生命を維持する上で大切な働きを担っています。

しかし、何かしらのダメージを受けていても自覚症状が現れにくいことから、「沈黙の臓器」とも呼ばれ、発見した時には命に関わるような状態であることもあります。

肝臓の主な3つの働きとは

①代謝・貯蓄

肝臓は、炭水化物(糖質)、タンパク質、脂質をはじめ、消化器官から取り込まれた栄養素を分解したり、合成したりする他、エネルギーを蓄えておく働きがあります。

②分解・解毒

体内に入ってきた薬剤やアルコールなどの有害な物質を解毒し、無害な物質に作り変えます。運動のしすぎなどで体内で発生するアンモニアなども体にとって有害な物質です。これらを無害なものへと処理しています。

③胆汁の生成

胆汁とは、脂肪を分解するとともにビタミンA、D、E、Kなど脂溶性ビタミンの吸収に欠かせない消化液です。胆汁には、脂肪の消化・吸収を助けたりする他、コレステロール、ビリルビンや薬物など肝臓の中の不要な物質を肝臓の外に排出する働きがあります。

肝機能異常はなぜ発見されにくいのか?

先ほども解説しましたが、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、自覚症状が現れにくく、病気が進行し症状が重くなってはじめて自覚症状が現れてくるケースが多いためです。その他の発見が遅れやすい理由について解説します。

理由①自己再生能力が高い臓器だから

肝臓は、他の臓器と異なり強い自己再生能力があります。そのため、手術などで3/4切除しても数ヶ月後には元の大きさに戻ります。さらに、臓器の中でも大きな臓器であるため、多少攻撃されてもダメージが少ないのです。初期のうちにしっかりと対処する必要があります。

理由②予備能力が高いから

肝臓は、これだけ多くの生命に関わる役割を担っているにも関わらず、通常2割程度の力で働いていると言われています。そのため、予備能力が非常に高い言えます。例えば、ウイルスや病原菌が肝臓を攻撃してきた場合に、普段眠らせているパワーを発揮することで、退治してしまうのです。知らず知らずのうちに、肝臓の力によってある程度処理をしてくれてしまっているので、肝臓の予備能力が尽きるまで自覚症状として現れにくいと考えられています。

健康診断で行う肝機能検査

自覚症状の現れにくい肝臓の異常を早期発見するために血液検査が行われています。

肝臓では、肝臓や胆管に接する血管が張り巡らされているため、肝臓や胆管で問題が起きると、それによって生じた物質が血液に漏れ出し、血液検査の結果に影響を及ぼすことがあるためです。

肝機能検査の項目と結果の見かた

健康診断の結果が返ってきた時に、よく分からず放置!・・・なんてことにならないように、それぞれの数値が示す意味やどんな病気が疑われのか検査結果の見かたを簡単に解説します。

●総タンパク

血液から赤血球などを取り除いた血清の中には、100種類以上のタンパク質が含まれており、それらを総称して「総タンパク」と呼びます。

基準値は6.5~8.0gdLです。

<疑われる病気>

肝炎、肝硬変、栄養障害など

●アルブミン

血清中のタンパク質の半分以上を占める成分です。

基準値は4.0g/dLです。様々な病気で低値となるため、この数値だけで病気の特定はできませんが、肝機能障害などが考えられます。

●総ビリルビン

胆汁の主な成分で、通常は胆汁と一緒に排泄されますが、肝臓や胆道の障害により血液中にあふれ出します。また、血液中にビリルビンの色素が増えると皮膚などが黄色くなります。この状態を黄疸と言います。

基準値は1.1㎎/dL以下です。

<疑われる病気>

肝炎、肝硬変、胆石症、溶血性貧血など

●ASTとALT

どちらも肝細胞に多く含まれる酵素で、タンパク質を分解してアミノ酸を作るなどの重要な働きをしています。

基準値は30U/L以下で、肝細胞などで障害が起こると高値になります。

<疑われる病気>

肝炎、脂肪肝、肝硬変など

●γーGTP

肝細胞に含まれる酵素で、アルコールや薬などを無害化する働きがあります。

基準値は50U/L以下で、お酒の飲みすぎや油脂の摂りすぎなどにより高値になります。また、胆石などにより胆汁が流れにくい場合も高値を示すことがあります。

<疑われる病気>

アルコールの過剰摂取、薬物摂取の副作用、肝障害、胆道の病気など

●ALP

肝臓に含まれる酵素で、通常は胆汁と一緒に排泄されますが、肝臓や胆道の障害によって数値が上がります。

基準値は38~113U/L未満です。

<疑われる病気>

肝炎、総胆管結石、胆管炎など

来月のテーマは、「放っておくと怖い!肝臓機能異常とは」です。