生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
長引くコロナ禍によって心身のバランスを崩す方も少なくありません。リモートワークの日々が続き、友人や家族と思う存分遊んだり旅行に行けなかったりと、ストレスが溜まり発散できない状況にある方も多いのではないでしょうか。
こうした心理的ストレスは、腸内環境を悪化させるといわれています。その仕組みを探求していきましょう。
腸は「第二の脳」とも呼ばれ、独自の神経ネットワークをもち、脳からの指令がなくても独立して活動することができる唯一の組織です。
脳と腸は自律神経や内分泌、免疫などを介して互いに影響を及ぼしあっています。脳から腸への情報伝達(脳→腸シグナル)と、腸から脳への情報伝達(腸→脳シグナル)が、一方的ではなく双方向的に影響を及ぼしているのです。こうした脳と腸の関係を「脳腸相関」と呼びます。
そのため、心理的ストレスが腸に影響を及ぼすだけでなく、腸内環境が悪いと脳が不安感や抑うつ感を感じるようにもなります。
2021年5月に米学術雑誌「サイエンス」に掲載された北海道大学の研究により、心理的ストレスにより「αディフェンシン」と呼ばれる腸の自然免疫に関わる物質が減少し、腸内細菌のバランスが崩れてうつ症状が表れることが解明されました。
αディフェンシンは、強力な殺菌力をもち、病原体などが侵入した際処理をして腸内環境を正常に保ちます。そのため、αディフェンシンが減少すると腸内環境の乱れに繋がってしまいます。
やる気が出ず、不安な気持ちになりやすいのは、腸の環境が影響しているかもしれません。脳腸相関を意識し、毎日元気に生活を送るためにも腸が喜ぶ生活習慣を心掛けることが大切です。
やはり腸内環境に直結するのが食事です。自分の好きな食べ物と、腸内細菌が喜ぶものでは少し違いがあるかもしれません。腸内細菌の中でも体によい働きをするものを善玉菌と呼びます。善玉菌のエサとなるものは、「食物繊維」や「オリゴ糖」です。
こうした栄養素や成分の摂取を増やすために、例えば白米⇒玄米に変える、食パン⇒全粒粉のパンに変える、海藻やきのこ、野菜、果物などを意識して積極的に取り入れると善玉菌が増え腸内環境がよくなります。ヨーグルトや納豆など発酵食品などもオススメです。反対に、お肉を取り過ぎると悪玉菌が増えやすくなるため注意が必要です。
体を動かすことで、体の振動や筋肉の動きが腸の中で便を先に送る動きをサポートしてくれます。ウォーキングをする、駅やオフィスで階段を使う、スクワットや腹筋運動を取り入れるなどこまめに運動をするよう心掛けましょう。
腸内の環境が整うことで、気持ちがスッキリとし質の良い睡眠にも繋がります。
生活様式が変わりつつある今、これまで以上に「腸」を大事にしてみませんか。
来月のテーマは、「コロナ疲れから来る「肩こりと頭痛」 ~新しい生活様式~」です。