健康管理情報

気をつけて、肺炎球菌による肺炎 ~感染症~

2020年9月
感染症

日本人の死亡原因の上位を占める肺炎ですが、亡くなる日本人のほとんどが65歳以上です。
高齢になるとちょっとしたきっかけで肺炎を起こしやすくなり、急激に症状が進むこともあります。

今月は肺炎の中でもテレビCMなどでもよく目にするようになった“肺炎球菌”について解説していきます!

肺炎のおじいさん

肺炎球菌って何?

その名の通り、肺に感染して「炎症」を起こします。肺炎球が原因で起こった肺炎は全体の2~3割を占めています。

肺炎球菌は莢膜(きょうまく)という、細菌が分泌する多糖類やポリペプチドからできた分厚い膜につつまれています。そのため、白血球など体の免疫機能が働きにくいのが特徴です。さらに、抗菌薬(抗生物質)が効かない耐性菌も登場しており、肺炎球菌感染症は重症化しやすいという特徴もあります。

肺炎球菌の構造
   

どんな人がかかりやすいのか?

肺炎球菌による感染症にかかりやすいのは、免疫機能が未発達の5歳未満の乳幼児と、65歳以上の方です。小児の細菌感染症の主な原因菌であり、また高齢者の一般的な肺炎の原因で最も多い菌の一つです。65歳以上の方は健康そうに見えていても加齢とともに、免疫を司る細胞の数が減少し、免疫機能が低下しているため、感染症にかかりやすくなっています。また、糖尿病、心疾患、呼吸器疾患、腎不全などの慢性疾患をお持ちの方や、病気の治療中で免疫が低下している方、たばこを吸っている方なども感染のリスクが高いことが分かっています。

さらに、高齢の方は咀嚼・嚥下機能などの低下による誤嚥を起こしやすくなります。また、食事中のみならず、唾液中に含まれる細菌が体内に入ることで肺での炎症が起き、肺炎球菌にも感染するリスクが高まることも懸念されています。

感染経路

肺炎球菌は、小児では無症状での保菌が多く、成人でも3~5%くらいの割合で喉や鼻に常在している細菌でもあります。保菌している人が何らかの疾患を発症するわけではなく、咳をすることによって唾液などを通じて人から人へ感染します。(飛沫感染)健康な人では症状はでませんが、免疫力の低い状態の人に感染すると重症化につながります。

肺炎のしくみ

予防方法

肺炎球菌が体に入り込まないようにするには、手洗い・うがいの励行や適切なマスクの着用といった日常的な感染予防があります。また、加齢とともに免疫力が低下して感染しやすくなるため、慢性疾患をお持ちの方はその治療に努めることや、たばこを吸う方は禁煙すること、規則正しい生活を送ることなどにより、免疫力を高めることが大切です。

また、あらかじめ肺炎球菌に対する免疫をつくるために、肺炎球菌ワクチンを接種することは、すぐにできる感染症予防法の一つです。

~ワクチン接種~

肺炎球菌ワクチンは平成26年10月1日より、高齢者を対象に定期接種となりました。2023年度までは、該当する年度65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳となる方と、60歳から65歳未満の方で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に自己の身辺の日常活動が極度に制限される程の障害、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能の低下により日常生活がほとんど不可能な程の障害がある方は定期接種の対象となります。

ワクチン接種はあくまで重症化を防ぐものとなるため、日頃から手洗い・うがい、腸内環境を整え、免疫力を落とさないように適度な運動や食生活などを意識することも大切です。

高齢の方は義歯など使用している方も多く、誤嚥など起こしやすくなります。併せて、口腔ケアや嚥下体操などを行うようにしましょう。

来月のテーマは、「百日咳、ポリオ、ジフテリア、破傷風 ~感染症~」です。