生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
腸管出血性大腸菌O-157とは、ベロ毒素と呼ばれる強い毒素を生産する大腸菌の一種です。人間の腸の中にはさまざまな大腸菌がいますが、ほとんどは害がありません。害を及ぼす大腸菌を病原性大腸菌と呼び、そのうちベロ毒素を生産する大腸菌を腸管出血性大腸菌と呼びます。O-157は、大腸菌表面の型(抗原)がOであり、157番目に発見されたという意味です。ほかに、O-26、O-111、O-128なども知られています。
主な症状は、激しい水様便、激しい腹痛、発熱(一過性)、吐き気、血便などで、潜伏期間は3~5日(最短1~最長8日)です。感染力が強く、数十個程度の菌が体に入っただけで発症します。特に、高齢者や子どもは、溶血性尿毒症症候群(HUS)などの合併症を引き起こしやすく、命を落とす人もいます。O-157のワクチンはなく、基本的な治療は対症療法になるため、すべての年代の人が気を付けたい感染症の1つです。O-157のような症状が現れた場合は、医師の診断に基づいて適切な治療を受けることが大切です。下痢止めや痛み止めの中には、ベロ毒素が体外に排泄されにくくなるものもあるため、自己判断での服用は推奨されません。
気温が高い初夏から初秋にかけて多く発生していますが、気温が低い時期でも発生が見られるため、1年を通して注意が必要です。
O-157は牛などの家畜の大腸を住みかとしており、O-157に汚染された食べ物や水などから体内に入り込むことが多く、感染症を引き起こします。日本国内では、ステーキ、ハンバーグ、ローストビーフなどのレアな状態が好まれる牛肉を使用した料理や牛レバー刺し、生焼けの肉類、キャベツ、キュウリ、カイワレ大根などの生野菜、井戸水など、さまざまな食品で発生しています。また、生肉などのO-157に汚染された食品から手指や調理器具などを介して、別の食品を汚染して、感染することがあります。
感染者の便、使用したトイレ、浴槽などから周りの人が感染し、人から人へと二次感染が広まっていきます。
O-157は、食中毒の予防と同じで「つけない」「増やさない」「やっつける」が大切です。
O-157は熱に弱く、75℃で1分以上の加熱で死滅します。また、症状がなくなったあとも、1~2週間の間は菌が便などから排泄されるため、消毒などの予防は続けて行う必要があります。
来月のテーマは、「子どもの三大夏風邪(手足口病・ヘルパンギーナ・プール熱) ~感染症~」です。