健康管理情報

腸管出血性大腸菌O-157 ~感染症~

2020年5月
更新)
感染症

腸管出血性大腸菌O-157とは

腸管出血性大腸菌O-157とは、ベロ毒素と呼ばれる強い毒素を生産する大腸菌の一種です。人間の腸の中にはさまざまな大腸菌がいますが、ほとんどは害がありません。害を及ぼす大腸菌を病原性大腸菌と呼び、そのうちベロ毒素を生産する大腸菌を腸管出血性大腸菌と呼びます。O-157は、大腸菌表面の型(抗原)がOであり、157番目に発見されたという意味です。ほかに、O-26、O-111、O-128なども知られています。

腸管出血性大腸菌O-157

O-157に感染すると

主な症状は、激しい水様便、激しい腹痛、発熱(一過性)、吐き気、血便などで、潜伏期間は3~5日(最短1~最長8日)です。感染力が強く、数十個程度の菌が体に入っただけで発症します。特に、高齢者や子どもは、溶血性尿毒症症候群(HUS)などの合併症を引き起こしやすく、命を落とす人もいます。O-157のワクチンはなく、基本的な治療は対症療法になるため、すべての年代の人が気を付けたい感染症の1つです。O-157のような症状が現れた場合は、医師の診断に基づいて適切な治療を受けることが大切です。下痢止めや痛み止めの中には、ベロ毒素が体外に排泄されにくくなるものもあるため、自己判断での服用は推奨されません。

O-157の感染経路

気温が高い初夏から初秋にかけて多く発生していますが、気温が低い時期でも発生が見られるため、1年を通して注意が必要です。

一次感染

O-157は牛などの家畜の大腸を住みかとしており、O-157に汚染された食べ物や水などから体内に入り込むことが多く、感染症を引き起こします。日本国内では、ステーキ、ハンバーグ、ローストビーフなどのレアな状態が好まれる牛肉を使用した料理や牛レバー刺し、生焼けの肉類、キャベツ、キュウリ、カイワレ大根などの生野菜、井戸水など、さまざまな食品で発生しています。また、生肉などのO-157に汚染された食品から手指や調理器具などを介して、別の食品を汚染して、感染することがあります。

一次感染 ステーキ 一次感染 調理器具
二次感染

感染者の便、使用したトイレ、浴槽などから周りの人が感染し、人から人へと二次感染が広まっていきます。

O-157の予防

O-157は、食中毒の予防と同じで「つけない」「増やさない」「やっつける」が大切です。

O-157は熱に弱く、75℃で1分以上の加熱で死滅します。また、症状がなくなったあとも、1~2週間の間は菌が便などから排泄されるため、消毒などの予防は続けて行う必要があります。

一次感染予防
つけない
  • 生で食べる野菜は特によく洗って食べる
  • 冷蔵庫や冷凍庫では肉、魚などはスペースを分けて保存する
  • 肉汁や魚の水分などが漏れて、ほかの食品や調理器具などを汚染しないようにする
  • 生の肉、魚、卵を取り扱った後には、十分に手洗いをする
  • 生肉や魚で使用した調理器具は、きれいに洗い、消毒や熱湯消毒などを行う。(調理器具は、肉用、魚用、野菜用と別々にそろえるとさらに安全)
  • 焼肉やバーベキューで、生肉を掴むトングと焼けた肉を掴むトングを分ける
一次感染予防:つけない
増やさない
  • 室温で食品を放置するのは避ける。O-157は室温でも15~20分で約2倍に増えるため、調理済みの食品は、10℃以下に冷やすか、65℃以上で保存しましょう。
一次感染予防:増やさない
やっつける
  • O-157は熱に弱いため、75℃で1分以上の加熱をする。特に、肉類はよく焼いて食べる
一次感染予防:やっつける
二次感染予防(家族などの身近な人が感染した時)
  • こまめに手洗いを行う。特に、トイレ使用後、調理前、調理後、食事の前などはよく洗う
  • 感染者が触れるドアノブやトイレなどをこまめに消毒する
  • 感染者の便で汚れた衣類は、つけおきで消毒、もしくは煮沸消毒をして、家族とは別に洗濯をする
  • 感染者は、入浴時に家族と一緒に入ることは避けて、浴槽に浸からないようにし、使用するタオル類は家族と共有をしない

来月のテーマは、「子どもの三大夏風邪(手足口病・ヘルパンギーナ・プール熱) ~感染症~」です。