生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
昨今麻疹(はしか)・風疹の流行のニュースをしばしば耳にしますが、毎年3~8月頃に流行するといわれています。風疹は「3日はしか」とも呼ばれるほど、麻疹と風疹は似た症状が出ます。今回はこの2つの感染症の相違を抑えながら、流行前にしっかりと予防ができるように解説していきます!
麻疹と風疹は、どちらも急性の全身感染症で、主な症状は発疹と発熱です。どちらも合併症があり、後遺症につながったり、生命にかかわる場合があります。
麻疹は、咳や鼻水、めやに、38度前後の発熱などの主症状が現れた後、39℃以上の高熱と発疹が出て、場合によって中耳炎や肺炎、脳炎などを合併しやすいといわれています。特に肺炎や脳炎は生命に関わる合併症で、麻疹患者の約1,000人に1人は死亡するといわれています。また、学童期の子どもは、亜急性硬化性全脳炎と呼ばれる中枢神経疾患を発症することもあり、麻疹は感染症の中でも症状・合併症が重い病気と考えられています。
麻疹は、空気感染・飛沫感染・接触感染とさまざまな感染経路があり、その感染力は極めて強く、手洗いやうがい、マスクだけでは予防できないので、予防接種(主に接種されているのは、麻疹・風疹混合ワクチン)が一番の対策となります。麻疹の予防接種は、1回の接種で免疫がつかなかったり、免疫がついた後時間の経過で免疫が減衰したり、接種し忘れた場合の機会として、生涯2回接種が基本となっています。
近年は成人での感染が流行していますので、ご自身の接種歴を確認して、合計2回の接種に足りていない場合や接種歴・罹患歴が不明な場合は、2回の接種を推奨します。
生年月日 | 接種歴 |
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1972年9月30日以前の生まれ | 1回も接種していない可能性が高い |
1972年10月1日~1990年4月1日生まれ | 定期接種が開始され、1回のみ接種 |
1990年4月2日~2000年4月1日生まれ | 2回目の定期接種が実施された時期。 ただし、接種率が低かったため合計2回の接種をしていない場合あり |
2000年4月2日以降の生まれ | 2回接種 |
風疹の発熱や発疹は、麻疹より期間が短く、軽症です。ただし、その感染症状は、感染症状を示さない不顕性感染から、脳炎や血小板減少性紫斑病(血小板数が減少し、出血しやすくなる病気)など重篤な合併症まで幅広いため、決して軽視はできません。特に、妊娠初期の妊婦が風疹に感染すると、胎児が先天性風疹症候群(難聴、先天性心疾患、白内障など)を起こす可能性が高くなります。このような母子感染をするウイルスは風疹以外にもありますが、胎児に感染する頻度が最も高いウイルスは風疹といわれています。
風疹の感染経路は飛沫感染で、予防接種が最も有効な予防策となります。ワクチン(主に接種されているのは、麻疹・風疹混合ワクチン)を接種することによって、95%以上の人が風疹ウイルスに対する免疫を獲得することができるといわれているので、麻疹同様に生涯合計2回の接種が推奨されています。性別や年齢によって接種歴が異なるので、確認してみましょう。
生年月日 | 接種歴 |
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1962年4月1日以前の生まれ | 1回も接種していない可能性が高い |
1962年4月2日~1979年4月1日生まれ | 女性のみ集団接種が実施 |
1979年4月2日~1987年10月1日生まれ | 中学生時に定期接種が開始されたが、接種率は低い |
1987年10月2日~1990年4月1日 | 1~7歳半に1回の定期接種が開始 |
1990年4月2日~2000年4月1日生まれ | 2回目の定期接種が実施された時期。 ただし、接種率が低かったため合計2回の接種をしていない場合あり |
2000年4月2日以降 | 2回接種 |
※すでに妊娠している場合、麻疹・風疹混合ワクチンの接種ができませんので、流行時には外出を避け、人込みに近づかないようにするなどの注意が必要です。
麻疹・風疹ともに、抗生物質のような特異的な治療ができないため、感染してしまったら自然治癒を待つしかありません。普段からうがい・手洗い・マスク着用などを基本に、流行前にワクチン接種を行うなど、予防対策をしっかり行いましょう!
来月のテーマは、「デング熱 ~感染症~」です。