生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
今月は、食環境や、食事がもたらす心に注目します。
私たちが、生きていくうえで「食」という行動は欠かせないものです。食事は、単に生命維持のためのものではなく、四季折々の旬の食材を使った手料理を食べる楽しみや、家族みんなで食卓を囲みながら会話をする喜びなども与えてくれます。
しかし、日本経済の成長にともなう外食産業の発展や、女性の社会進出などによるライフスタイルの変化により、現代の食卓ではそのような光景はみられなくなりつつあります。
改めて、自分たちの「食」について見直してみましょう。
私たち日本人は、従来、お米を主食に、野菜・魚・豆類など国内で生産、捕獲される素材を用い、さらには畜産物や果実などがバランスよく加わった、健康的で豊かな食生活「日本型食生活」を送っていました。
しかし、経済成長を遂げた現代社会の食卓は、グローバル化が進み、さまざまな食べ物がありふれています。
輸入食品が増え、ファーストフード、冷凍食品、インスタント食品、コンビニ弁当などの登場により、お金さえ出せば、季節や地域に関係なく好きなものを好きなだけ手に入れることが出来るようになりました。
そして主食はお米からパンに、主菜も魚主体から油脂を使った肉類の料理へと、洋食と呼ばれる欧米スタイルの食事へ変化したのです。
現代社会では、食事を家族そろって食べる事が少なくなっています。
なぜならば、主に家族の生活時間の変化や男女の役割の変化によるものと考えられます。
例えば、お父さんは長時間通勤や不規則な勤務、お母さんも仕事をしていて帰りが遅い、子どもたちは習い事や塾に通うなど、家族がそれぞれに忙しくしているのが現状であります。
「個」から連想されるように、それぞれが別々のものを食べることです。
家族が同じ食卓についていても、それぞれが食べたいものを食べていると、協調性が養われないなどの問題につながります。また、食べたことがないものや苦手なものを食べる機会が減るうえ、好きなものだけを食べるので栄養バランスが悪くなります。
「孤」から連想されるように、1人で食べることです。
1人での食事は、孤独感や寂しさから辛いものになり、食事がつまらなく感じてしまいます。また、子どもたちにとって家族そろっての食事は、食事マナーも身に付き、栄養バランスの問題も解消できるうえ、食欲が増し協調性やコミュニケーション能力を育みます。
家族で会話をしながら楽しく食事をする経験は、大人になってからの家庭像のイメージ作りにも繋がることでしょう。
手軽で便利な日本の食生活の存在が、より個食・孤食をエスカレートさせていくのであろうと思われます。
また、現代の飽食の日本では、食事が出来るという事があたりまえすぎて、幸せであると思うことが薄れているのではないかと考えられます。
外食する際も、メニューが豊富であることにより、必要以上の量を注文し、最終的に食べきれずに残すという事もよくみられます。また、嫌いな食べ物は食べないで残す子どもたちも増えています。
家族で食卓を囲みながら、大人も子どもも、食事ができる事の大切さや食物への感謝の気持ちについて、話し合う事も必要なのではと考えます。
来月のテーマは、「風邪・インフルエンザ ~ハーブ・アロマと健康~」です。