生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
今月は、食欲に注目します。
食欲とは、空腹を感じ、食物を食べる願望です。新陳代謝を維持する為に充分なエネルギーを取り入れるのに役立ち、消化管と脂肪組織と脳との間の厳密な相互作用で調節されています。
食欲の秋で、食べ過ぎて困ってしまっているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。では、食欲を減らすにはどうしたらよいでしょうか。
それはよく噛んで食べることです。1口30回噛むことで、脳内の「ヒスタミン」という物質が増え、満腹中枢が刺激されることによって食欲が減少します。最初は30回噛むことになかなか慣れないかもしれませんが、根気よく続けてみましょう。
では、良く噛む以外に脳内の「ヒスタミン」を増やすにはどうしたらよいでしょうか。それは「ヒスチジン」を含む食品を食べることです。「ヒスチジン」はアミノ酸の一種で、脳内で「ヒスタミン」に変化します。「ヒスチジン」を多く含む食品としては、本マグロやかつお、ぶり、さば、さんまなど、赤身魚や背の青い魚に多く含まれています。
また、「噛む」という行動は、顔面の筋肉全てを動かします。顎から脳へ体性感覚を伝える神経が走っているので脳を刺激し、活発にさせる効果があります。
さらに、小さいお子様には噛むことで、血液を脳へ送るポンプ役もしてくれるので、脳の発達を促してくれます。噛む回数が多いほど刺激が多くなりますので、硬いものを食べると良いでしょう。もちろん良く噛むことで消化も良くなります。
では、一方で最近食欲がない、と言う方もいらっしゃるかと思います。ではなぜ食欲がなくなってしまうのでしょうか。
精神的ストレス(人間関係や仕事などの悩みや不安)や、身体的ストレス(過労、事故、怪我)などのストレスが続くと、自律神経の交感神経が過剰に刺激され、消化吸収を促進する副交感神経の働きが抑えられ、食欲が起こりにくくなります。
夏バテなどで体温調整がうまくいかなかったり、過剰な発汗で、からだの水分が不足した場合や、体調不良により、自律神経の働きが悪くなり、消化機能が低下し、食欲不振に陥ります。
運動不足により、活動量が低下すると、補給の必要性が低下するため食欲もわかなくなります。また、睡眠不足などで自律神経が乱れ、食欲不振を引き起こします。
他にも、アルコールの飲み過ぎにより、肝臓の働きが低下し、吐き気や全身の倦怠感で食欲不振になったり、加齢と共に運動能力が低下し、運動不足になってしまったり、義歯による噛みづらさから食欲不振になってしまったりと、原因はさまざまです。
では、食欲がない方達はどうしたら、食欲を出すことができるのでしょうか。
日常生活で出来る方法としては、やはり、基本の「規則正しい生活を送る」ことです。「早寝早起き」、「1日3食」など、体の本来のリズムを取り戻し、自律神経のバランスを整えましょう。
体を動かすことによって、食欲もわいてきて、気分もスッキリとしてくるでしょう。
ストレスを溜めないようにする事も大切です。不安や悩みを誰かに相談したり、気分転換に自分の好きな音楽を聴いたりするのも良いでしょう。
アルコールは適量を飲めば、百薬の長です。これは中国古代の史書「漢書」から出た言葉です。 酔うために飲むのではなく、楽しむために飲み、明日の活力を養いたいですね。
来月のテーマは、「環境と心 ~おいしさの秘密~」です。