健康管理情報

香り ~おいしさの秘密~

2011年7月号
更新)
おいしさの秘密

今月は、香りに注目します。

香りとは

香りとは、よい匂いのことをいいます。
匂いとは、そのものから漂ってきて、嗅覚を刺激するものです。一般的に、よい匂いは「香り」 いやな匂いは「臭い」と表記されています。
香りは、おいしさと深くつながっています。そのため、風邪や鼻炎などによって鼻詰まりを起こした状態で食事をしても、本来のおいしさを感じにくくなってしまいます。

香りをもたらす成分(香り成分)は、食物に含まれるものだけでも、果物などに含まれるテルペン類やエステル類をはじめ、数百種類あります。
ただし、香りは、ひとつの香り成分によってもたらされるものではなく、複数の香り成分によって成り立っています。
例えば、コーヒーの香りは700種類以上、紅茶の香りは500種類以上、ブドウやイチゴの香りは300種類以上もの香り成分が混ざり合ったものなのです。

  

また、香りは、香り成分の種類が同じであっても、その濃度が異なれば違うものとなります。
コーヒーや紅茶が品種ごとに個性ある香りをもたらすのは、そのためです。
なお、極端な例を挙げると、香り成分のひとつである有機化合物のインドールは、白い花を咲かせるジャスミンに低濃度で含まれ、あのさわやかな香りを構成していますが、なんと、排泄物にも高濃度で含まれ、あの不快な臭いを構成しています。香りは、香り成分の濃度によって、こんなにも大きな違いが生じることもあるのです。

  

香りのセンサー

香りのセンサーといえば鼻ですが、具体的には、鼻の奥の上部が該当します。
ここに存在する嗅粘膜(きゅうねんまく)に香り成分が触れると、信号が嗅神経(きゅうしんけい)を通じて大脳へ送られ、香りとして認識されるしくみになっています(図1参照)。

図1:嗅覚に関わる器官

嗅粘膜に香り成分が触れる主なタイミングは、食物から発せられる香り成分が、鼻孔(鼻の穴)から吸い込まれた時(図1中の①)と、咀嚼(そしゃく)した食物から発せられる香り成分が、呼吸に伴って口の奥から鼻へ吐き出された時(図1中の②)です。
したがって、食物の香りは、二段階にわたってもたらされています。
このしくみをうまく利用したのが「利き酒」です。利き酒とは、酒を少量味わって、そのよしあしを鑑定することですが、その際には、酒に鼻を近づけて香りを確認し、次に、少量の酒を口に含み、空気を口先から吸い込んで鼻へ吐き出すことで、さらなる香りを確認しています。
なお「臭い」も、香りと同じしくみで認識されています。

香りと好き嫌いの関係

多くの日本人にとっては好ましい香りと認識されても、外国人にとっては身の危険を感じる臭いと認識されてしまう食品があります。
それは、鰹節や納豆です。

 

香りの好き嫌いは、こどもの頃からの食習慣や食経験で培われ、蓄積されていきます。
したがって、多くの日本人にとっては、鰹節などをおいしく食べたという今までの食経験があるため、漂ってくる鰹節の香りだけでも、食欲がかき立てられるようになります。

香りは食欲増進役

食品などの香りをかぐと、気分がリラックスして交感神経の興奮がおさまるため、胃腸のはたらきが高まり、食欲が出てきます。
逆に、臭いをかぐと、ストレスを感じて交感神経が興奮するため、胃腸のはたらきが落ち、食欲もなくなります。
このように、食欲は、交感神経の状態に左右されています。
したがって、食事の際は、ゆったりとした気分で、ひとつひとつの食物が持つ味と香りを楽しむようにすることで、結果として胃腸の負担を軽減し、栄養素を効率良く吸収することができるのです。

来月のテーマは、「食感 ~おいしさの秘密~」です。