生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
今月は、辛味、渋味に注目します。
辛味とは、トウガラシやコショウ、サンショウ、ショウガ、ワサビなどの刺激的な味のことをいいます。
前回までに紹介した5種類の基本的な味「甘味、塩味、酸味、苦味、うま味」は、味覚神経で感じます。
これに対し辛味は、痛みなどと同じような刺激として、痛覚や温度覚で感じ取る味なので、基本味とは別のものとされています。辛いものを食べて「口から火が出そう」などと表現しますが、辛味を熱さや痛さで感じているためです。
このように、広い意味では味に含めますが、厳密な意味では、辛味は味ではないのです。
辛味のもとは、その植物に含まれている辛味成分です。それぞれ含まれている辛味成分が違うので、辛味の感じ方も違ってきます。
辛味は不揮発性(ホット系)か、揮発性(シャープ系)によっておおまかに2種類に分けることができます。
ホット系…口の中をカーッと熱く感じさせるもの
シャープ系…鼻の粘膜をツーンと刺激するもの
辛味のあるスパイスの中で最も辛いスパイスはトウガラシです。トウガラシの辛味成分のカプサイシンは、ショウガやコショウの辛味成分の辛さと比べて100~200倍にもなるそうです。
ホット系のスパイスは、水よりもヨーグルトや牛乳、アイスクリーム、マヨネーズといった食品で抑えるのが効果的です。油でコーティングされて辛味がおさまります。
例えば、カレーの辛味はホット系なので、カレーを食べるときは、ヨーグルトや牛乳と一緒に食べると辛味がおさまります。
シャープ系のスパイスは、揮発性のため、辛味感は続かず、水を飲むとおさまります。
例えば、ワサビやマスタードを使った料理の辛さはお茶や水で抑えることができます。
辛味には、発汗作用や食欲増進効果をはじめ、衛生面の効果など様々あるといわれています。
辛いものを食べて体温が上昇し、汗をかいた経験は誰にでもあると思いますが、これは辛味成分による刺激が、体内の活動を高めているのです。
また、辛味成分は、口や胃などの消化器の粘膜を刺激するので、中枢神経の働きを高め、だ液や胃液の分泌が増え、食欲がわいてきます。腸の運動も促進され、栄養が吸収されやすくなります。
トウガラシの辛味成分であるカプサイシンには、体脂肪を燃焼する働きがあり、ダイエット効果もあります。
ワサビは、消臭や食中毒の病原菌に対する抗菌作用がありますが、他にも、抗がん作用や抗酸化作用、抗ピロリ菌作用なども報告されているそうです。
渋味とは、渋柿や西洋梨、緑茶、ワイン、コーヒーなどの渋い味のことをいいます。
渋味も辛味と同様に、味覚神経ではなく、痛覚や温度覚で感じ取る味なので、厳密な意味では渋味は味ではありません。
渋味は、口の粘膜が「縮められた」ような感覚になることから「収斂味(しゅうれんみ)」と呼ばれることもあります。「収斂味」という表現は馴染みがありませんが、渋柿を食べた後のしびれたような感覚のことです。
渋味のもとになる成分はポリフェノールであるタンニンです。
渋柿に含まれるカキタンニン、緑茶に含まれるカテキン、紅茶に含まれるテアフラビン、テアルビジンなどがあります。
これらは抗酸化作用や抗がん作用、殺菌作用などさまざまな効用があり、病気を予防してくれます。血中のコレステロール値を下げる作用があり、動脈硬化、高血圧、心臓疾患、脳血管障害の予防や、脂肪を分解してエネルギーに変える働きもあるので、肥満の予防などにも効果を発揮します。
緑茶に含まれているカテキンは、特定保健用食品としても使われています。
来月のテーマは、「香り ~おいしさの秘密~」です。