生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
今月は、苦味に注目します。
苦味とは、コーヒーやビール、ゴーヤなどの、舌を刺激するような苦い味のことをいい、人間が味わうことのできる五種類の基本的な味(甘味、塩味、苦味、苦味、うま味)のひとつです。
苦味は、本来、毒のあるものを示す味として認識されるため、甘味や塩味と比べて、約千倍も感じやすくなっています。
また、こどもは、大人以上に苦味に敏感であり、苦味の強いゴーヤやピーマンなどを口にしたがらない傾向があります。
その敏感さを持つ理由は、こどもが、毒のあるものを判別できずに口に入れたとしても、すぐにその苦味を感じ取って本能的に吐き出すことで、危険を避けられるようにするためと考えられています。
しかし、成長の過程で、安全、楽しい、健康的、というような良いイメージとともに苦味を口にする経験を重ねることで、やがて、苦味は、おいしさの範囲を広げて食生活を豊かにする「大人の味」として受け入れられるようになります。
苦味をもたらす成分は、コーヒーなどのカフェイン、ビールのイソフムロン、ゴーヤのククルビタシンなど、植物由来のものが代表的です。
これらの成分は、植物が、自身を守るために作り出したと考えられています。苦味があれば、多くの動物も人間と同じように、毒のあるものとして認識するからです。
苦味をもたらす成分は、人間の安全を守るためにも利用されています。
それは、史上最強の苦味を誇る、デナトニウムという化合物です。
その苦味は、耳かき1杯程度の量を、浴槽いっぱいに張った水に入れて溶かしたものを口に含んだだけでも、十分に感じられるほどだといわれています。
そこで、洗剤などには、微量のデナトニウムが配合されているものがあります。
もし、それらをこどもが誤って口に入れても、あまりの苦さにすぐ吐き出してしまうため、飲み込まずに済むからです。
ある研究によると、苦味をもたらす成分のひとつ、フェニルチオカルバミドという化合物に対して、約75%の人は強い苦味を感じ、約25%の人は全く味を感じないという結果が出ています。
そして、その原因は、舌にある苦味受容体の構造の遺伝的な違いにあることや、フェニルチオカルバミドに苦味を感じる人は、似た種類の苦味成分が含まれているブロッコリーにも苦味を感じている可能性が高いことがわかっています。
普段よりもコーヒーや紅茶をおかわりしたり、ビールをゴクゴクと飲み干せたりする日はありませんか?
もしかしたら、それは、あなたの体がストレス状態にあるからかもしれません。
ストレスを感じると、唾液中に特殊なタンパク質が増え、舌にある苦味受容体が塞がれるため、一時的に苦味を感じにくくなるからです。
苦味をもたらす成分には、ストレス解消に役立つはたらきがあるため、体は、それらをたくさん取り入れようとしているのです。
例えば、コーヒーや紅茶などに多く含まれているカフェインは、摂取後30分程度で大脳皮質を中心とする中枢神経系に作用し、数時間にわたって疲労感を抑え、気分を高めます。 コーヒーや紅茶を飲む場合は、カフェイン摂取量との兼ね合いを考えて、1日3杯までを目安にすると良いでしょう。
また、ビールのイソフムロンは、自律神経系のバランスを調節して気分をリラックスさせます。
ビールを飲む場合は、アルコール摂取量との兼ね合いを考えて、1日500ml(中ビン1本)までを目安にすると良いでしょう。なお、ビールはよく冷やしてから飲むと、引き立てられた苦味を堪能することができます。
来月のテーマは、「辛味、渋味 ~おいしさの秘密~」です。