健康管理情報

塩味 ~おいしさの秘密~

2011年2月号
更新)
おいしさの秘密

今月は、塩味(えんみ)に注目します。

塩味とは

塩味とは、食塩そのものや、食塩を用いた調味料等によってつけた味のことをいい、人間が味わうことのできる5種類の基本的な味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)のひとつです。
適度な塩味は、体の調子を整えるために必要なミネラルを示す味として本能的に好まれると考えられています。

 

塩味をもたらす成分は、食塩の主成分の塩化ナトリウムです。 塩化ナトリウムは、塩素とナトリウムが結合したものですが、単体の塩素やナトリウムは塩味をもたらしません。
食塩は、塩化ナトリウムが豊富に存在する海水や岩塩(海水が濃縮し結晶化したもの)から、さまざまな方法で製造されています。

 

塩味は栄養補給のお助け役

適度な塩味は、食欲を増進し、栄養素の摂取量を高めます。
一般的においしいと感じられる料理の塩味を塩分濃度で示すと、その多くが、人間の体液と同じ0.9%前後の範囲に集中することがわかっています。
なお、塩分濃度0.9%前後のみそ汁を作る場合は、味噌汁の具に火を通したあとのだし汁130ml程度(1人分目安)に対して、味噌大さじ半分程度を溶かします。

 

塩味=血圧を上げる?

塩味のものを食べると血圧が上がる、と思われがちですが、これには個人差があります。
そもそも、血圧を上げる原因のひとつにナトリウムが挙げられますが、ナトリウムを腎臓から排せつするしくみが正常にはたらいている人であれば、摂取したナトリウムが血圧に影響を及ぼすことはありません。
しかし、遺伝をはじめ、肥満、腎臓疾患、糖尿病等のさまざまな原因によって、ナトリウムを腎臓から排せつするしくみに問題がみられる人は、摂取したナトリウムが体内に蓄積し、水分を引き込むナトリウムの性質によって血液量が増えてしまいます。
すると、増えた血液を循環させるために、心臓は、拍動を強めて拍動回数を増やします。 そして、血液が動脈壁に勢い良くぶつかるようになった結果、血圧が上がってしまうのです。

食品の食塩相当量の目安を知る方法

前述のように、ナトリウムは血圧を上げる一因となることから、食品の栄養成分表示にはその量が必ず記載されています。
しかし、ナトリウム量よりも、食塩相当量として見たほうが把握しやすい、という人も多いのではないでしょうか。

そこで、ナトリウム量から、大まかな食塩相当量を求めることのできる便利な計算式を紹介します。

 

ナトリウム量(mg)× 2.54 ÷ 1,000 = 食塩相当量(g)

 

計算式の2.54という数字は、ナトリウムがどれくらいの食塩量に相当するかを、次の計算式によって導き出したものです。

22.98977(ナトリウムの原子量)+35.453(塩素の原子量)=58.44277(食塩の分子量)
58.44277(食塩の分子量)÷22.98977(ナトリウムの原子量)=2.5421206≒ 2.54

 

ただし、この計算式では、その食品に含まれるナトリウム量を、全て食塩由来と見なしているため、実際の食塩含有量は計算結果よりも低くなります。
その理由は、食品から摂取するナトリウムには、食塩由来のものの他にも、うま味成分のグルタミン酸ナトリウムや、食品添加物のアスコルビン酸ナトリウムをはじめ、さまざまな種類があるからです。
なお、計算式の1,000という数字は、通常、mgで表記されるナトリウム量の単位を、gにするためのものです。

塩味と上手に付き合うコツ

塩味は、本来、生命を維持するために欠かせないものです。
しかし、そのために必要な量を食塩に換算すると、なんと、1.5g程度とされています。
それにも関わらず、日本人の食塩摂取量の平均値は、男性11.6g、女性9.9gという調査結果が出ており、食塩の過剰摂取は、高血圧や胃がん、咽頭がん等の発生に関与することからも、減塩がすすめられています。
なお、厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2010年版)」では、食塩相当量の目標量を男性9g未満、女性7.5g未満としています。

そこで、塩味と上手に付き合うために、すぐに試せるコツを2つ紹介します。

調味料は「付ける」

調味料は「上からかける」のではなく、小皿に入れて「付ける」ことによって、摂取量を半分程度に減らすことができます。
例えば、ハンバーグやコロッケのソース類をはじめ、サラダのドレッシング、寿司や冷奴のしょうゆ等は、それぞれ小皿に入れて、そこに各食品を付けながら食べるようにすると良いでしょう。

麺類の汁は残す

麺類を食べる時、麺を全て食べても、汁はまだたっぷりと残っているものです。
例えば、ラーメンを食べたあとは汁を残すようにすれば、汁を全て飲み干した場合と比べて食塩摂取量を3g減らすことができます。
なお、汁からの食塩摂取量を比較してみると、汁を全て残した場合は1.6g、2/3残した場合は2.7g、半分残した場合は3.2g、全て飲み干した場合は4.8gとなります。

来月のテーマは、「うま味 ~おいしさの秘密~」です。