生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
今年は、楽しく健康的な食生活を送るために欠かせない「おいしさ」に注目し、おいしさをもたらすさまざまな要素をひとつずつ取り上げていきます。
今月は「甘味(あまみ)」です。
甘味とは、砂糖や蜜のような甘い味のことをいい、人間が味わうことのできる5種類の基本的な味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)のひとつです。
生きるために必要なエネルギー源、つまり、炭水化物を示す味として本能的に好まれると考えられ、赤ちゃんでさえ、甘味を感じた途端に微笑みを浮かべます。
甘味をもたらす成分は、炭水化物の一種であるショ糖、ブドウ糖、果糖などが代表的であり、果物、カボチャ、サツマイモ、さらには、砂糖の原料であるサトウキビやテンサイなどに多く存在しています。
もちろん、それらの成分は私達人間のために存在しているわけではなく、植物自身のエネルギー源としてつくり出され蓄えられたものであり、その恩恵を私達人間が受けているのです。
それでは、植物は、一体どのようにして炭水化物をつくり出しているのでしょうか。 その答えは、誰もが小学生の時に習った、光合成です。植物は、太陽光のエネルギーを用いて、二酸化炭素と水からエネルギー源となる炭水化物をつくり出し、同時に酸素を放出しています。
甘味を感じると、脳の快感を司る部分が刺激され、β-エンドルフィンやセロトニンというリラックス効果のある物質が分泌されます。脳波測定実験でも、甘味のあるものを食べた人の脳はリラックス状態を示すことが証明されています。
実際に、チョコレートなどを一口食べただけで気分が明るくなった、という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
塩味のお菓子と、甘いお菓子。エネルギー量が全く同じなら、甘いお菓子のほうが太りやすいのでは?と思われがちですが、味と太りやすさに直接の関連性はありません。
太るということは、体脂肪率が高くなるということです。その最大の原因は、摂取エネルギー量を消費しきれないこと、つまり、食べすぎなのです。
なお、摂取エネルギー量は、摂取した食品中の炭水化物、脂質、タンパク質のエネルギー量を合計したものであり、炭水化物とタンパク質は1gあたり4Kcal、脂質は1gあたり9Kcalという計算になります。
甘いものの代表格である砂糖は、ごはんやパンなどと同じ炭水化物に分類され、炭水化物自体のエネルギー量も変わりません。
また、甘いお菓子は糖尿病になりやすいのでは?とも思われがちですが、これも直接の関連性はありません。
糖尿病は「糖」という漢字が使われていることから誤解を招きがちですが、糖尿病の発症には、遺伝、肥満、ストレス等の要因が複雑に関係しています。
食事をすると、20~30分後に、脂肪細胞からレプチンというホルモンが血液中に分泌されます。そして、脳の視床下部にある満腹中枢が反応して満腹感がもたらされることで、私達は食べることをやめます。
レプチンの分泌量は、脂肪量に比例します。しかし、血液中のレプチンの濃度が高すぎると、満腹中枢の反応は鈍くなり、舌で甘味を受け取るはたらきも低下することが、マウスを用いた実験などによって証明されています。
そのため、私達人間も、肥満の人ほど満腹感を得にくい上に、甘味のものを食べ過ぎてしまうのではないかと考えられています。
冬の果物といえば、ミカンやリンゴですが、ミカンは、そのまま食べても冷やしてから食べても、甘味の大きな違いを感じることはありません。
一方で、リンゴは、冷やしてから食べたほうが、甘味を強く感じることができます。
その理由は、含まれる炭水化物の種類にあります。
ミカンにはショ糖が、リンゴには果糖が多く含まれています。
果糖は、温度が低くなると構造が変化して甘味度が高くなる特徴があるため、果糖がたくさん含まれているリンゴをはじめ、ナシ、ブドウ、スイカなどは、冷やしたほうが甘味を堪能できるのです。
今の季節、リンゴは寒い玄関やベランダなどに保管しておき、鍋料理を食べて体が温まったあとに、ひんやりした甘いリンゴを楽しむのも良いですね。
冬の野菜のカボチャやサツマイモも、調理法を工夫することで、甘味を堪能できます。
カボチャやサツマイモに含まれる主な炭水化物の種類はデンプンですが、60℃前後の温度で蒸したりゆでたりすることで、デンプンを糖に変える酵素がじっくりとはたらくため、火が通る頃には十分な甘味を引き出すことができます。
逆に、控えめな甘味を好む方は、短時間で済む電子レンジで加熱するとよいでしょう。
バター ……90g
カボチャ ……70g
卵 ……1個
塩 ……少々
薄力粉 ……110g
カボチャを適当な薄切りにして、フライパン(または鍋)に入れ、水50mlを加えて蓋をし、加熱する。
カボチャが軟らかくなったらバターを加え、玉杓子などでつぶしながら練り混ぜる。
卵、塩を順に加えてよく混ぜ、薄力粉を加えて、切るように混ぜる。
作業中のフライパン等に再び蓋をして、冷蔵庫で30分程度寝かせる。
まな板に薄力粉(分量外)を薄く振りまいてから生地を乗せ、麺棒などで伸ばし、包丁で好みの形に切り分ける。
180℃のオーブンで10分程度焼いてできあがり。
来月のテーマは、「塩味 ~おいしさの秘密~」です。