生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
ここ数年、世の中はお笑いブームです。テレビでは次々と新しいお笑い芸人が登場して人気者となっています。
しかし、笑いが注目を集めるのは、芸の世界だけではありません。 実は最近、医学の分野でも笑いの効果に着目した研究が進み、さまざまな病気の予防や改善に役立つことが科学的にも証明されてきています。
しかし、ストレスの多い現代では、笑う機会も少なくなっています。意識して笑いを日常生活に取り入れてみましょう。
笑うと「NK(ナチュラルキラー)細胞」が活性化されます。
このNK細胞は白血球の一種で、がん細胞や細菌に感染した細胞を死滅させる力があります。
つまり、笑うと免疫力が高まり、さまざまな病気に対して強い体ができるのです。
ストレスが高まると交感神経が優位になり、ストレスホルモンの分泌が増え、脳の温度が上がってしまいます。笑うと副交感神経が優位になり、ストレスホルモンの分泌が減少し、脳の温度が下がります。
笑っている時は、この2つの神経がバランス良く働いている状態になります。
笑うと腹式呼吸になり、大量の酸素を消費します。笑った時の酸素摂取量は、1回の深呼吸の約2倍、通常の呼吸の約3~4倍になるそうです。
ストレスを受けると脳は興奮状態になり、酸素をどんどん消費して脳細胞が酸素不足になり、働きが低下していきます。
そこで笑うことにより、大量の酸素が取り込まれ、細胞が活発化して働きが上昇します。
笑いには、楽しい、愉快な時に出る「快の笑い」、人と挨拶を交わす時などのコミュニケーションの場面で出る「社交場の笑い」、緊張が緩んで安心した時に出る「緊張緩和の笑い」の3つの種類があります。
健康に効果のある順番は、「緊張緩和の笑い」、「快の笑い」、「社交場の笑い」の順です。サラリーマンの場合は、「社交場の笑い」が6~7割を占めるといわれています。
「パッチ・アダムズ」という映画をご存知でしょうか?この映画は、笑いを治療に取り入れた実在の精神科医をモデルにしたものです。
笑いは、アメリカだけでなく日本でも医療現場にも取り入れられるようになってきています。その実験例をご紹介します。
2型糖尿病患者を対象に、血糖値を測定する実験を行いました。
1日目は糖尿病に関する講義を、2日目は漫才を聴いてもらうと、1日目の空腹時血糖値と食後血糖値の差は平均123mg/dlだったのに対し、2日目は平均77mg/dlでした。笑いが血糖値を下げたのです。
関節リウマチ患者に落語を聴いてもらい、その影響を調べたところ、ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾール値が基準値の範囲内まで下がり、リウマチを悪化させる物質が劇的に下がりました。
さらに、体が楽になったり痛みが軽い状態が続いたなどの成果を得ました。
男女18人を対象に、漫才や落語を見た後のNK細胞の活性と免疫力に関わるリンパ球を調べる実験が行われました。
NK細胞は14人が上昇し、免疫カのバランスを示す指標値についても、ほとんどの人が正常範囲に近づきました。
あなたは普段笑っていますか?笑うことなんて簡単そうですが、普段から笑い慣れていないと、急にはできないものです。そんな人に必要なのが、「笑う」ためのトレーニングです。
人の顔には表情筋という筋肉があり、この筋肉をほぐすことで笑いやすくなります。口を「あ・い・う・え・お」とゆっくり大きく開けてみたり、鼻の下をぐーっと伸ばしてみたり、顔全体の筋肉を自由に大きく動かしましょう。
毎日繰り返していれば、だんだん笑いやすい表情になってきます。
思い出し笑いでも作り笑いでも良いので、とりあえずお腹がよじれる程の大笑いを1分間続けてみましょう。
かなり大変なことですが、笑うきっかけをつかむ良いトレーニングになります。
普段あまりテレビを見ない人でも、娯楽番組や落語などを見てみましょう。
そして、面白い時には遠慮せず、声に出して大笑いしてみましょう。
日本には、「笑う門には福来たる」ということわざもあります。笑うことでプラス思考になれますし、痛みを和らげてくれる効果もあります。
足の小指をどこかの角にぶつけて、痛さのあまり笑ってしまった経験はありませんか?無意識に痛みを和らげようとしているのです。
面白くなくても、笑顔を作るだけでも効果はあります。笑うことは誰にでもできますので、なるべく笑顔でいるようにしましょう。
笑いには、健康効果以外にも面白い効果があります。
落語のビデオに笑い声を録音しておくと、つられて笑いやすくなります。逆に組織のトップがいつも苦虫を噛み潰したような表情をしていると、部下もほとんど笑わなくなります。
楽しくもないのに愛想笑いばかりしているとゆがんだ表情になります。顔の表情は、心から笑う時には左右対称に動きますが、心を押し殺した笑いだと非対称に動きます。繰り返していると、しわも非対称となり顔がゆがんで見えます。
笑顔を意図的に作ると、なぜか気分も楽しくなります。顔の筋肉の動きが脳へフィードバックされ、それに応じた脳のプログラムが呼び出され、楽しい表情がわいてきます。つまり、表情が感情を作るのです。
来月のテーマは、「ガーデニング ~ストレス解消法~」です。