生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
「落ち込んだ時に音楽を聴いて心が癒された」という経験はありませんか?
なぜ音楽を聴くと癒されるのでしょうか?
一定ではなく、大きくなったり小さくなったり、強くなったり弱くなったりする連続的な揺れのことを「ゆらぎ」といいます。
実は、音にあるこの「ゆらぎ」に心が安らぐ秘密があります。
人の生体リズムや自然界には、1/fというゆらぎがあるそうです。
例えば人の心臓の鼓動には1/fゆらぎがあり、川のせせらぎや虫の声などにも1/fゆらぎがあります。
そのお互いの振動が共鳴すると「美しい」と感じ、心を和ませてくれるのです。
1/fゆらぎの波長は、聴覚を通して脳に働きかけ、脳の自律神経の調整によって感情や情緒を安定させます。
それが臓器を安定させ、血液の流れを良くし、健康な体にしてくれるのです。
このような癒しは以下のような効果をもたらします。
気分に合った曲を聴くと、自分の気持ちが音楽と一緒になって、ぐっと内に秘めていたうっぷんが外に出るようになります。
胎教音楽の目的は、母親の情緒を安定させることであり、母親が音楽を聞いて赤ちゃんに伝えるものです。
1/fゆらぎをもっている音楽は、胎教にはベストです。
誰とも話をしないうちに、さみしさなどから認知症になるお年寄りがいます。
老人ホームで音楽療法を実施したところ、それまで無口だったお年寄りが、自分の知っている曲を聴いているうちに、緊張がほぐれておしゃべりをするようになったそうです。
お酒に音楽を聴かせたところ(実際に曲を聴かせたのではなく、音楽を振動エネルギーと考えてその振動を与えた)、非常に熟成されたまろやかなアルコールができたという話もあります。
また、脳から出る脳波は心身の状態によって異なり、リラックスしている時や、集中している時に出ているのが「α波」です。
健康な人であれば、肩の力を抜き目を閉じて安静にしていれば頻繁に表れます。
しかし、起きて活動している時などは、緊張やイライラ状態の脳波である「β波」が多く表れ、ストレスを招きます。
1/fゆらぎをもつ音楽を聴いている時にはα波が出やすいといわれています。
ストレス解消の音楽というと、クラシック音楽の効果が指摘されますが、最近の研究では、クラシックからJ-POPまで、あらゆる音楽は1/fゆらぎを持っていて、聴きたい音楽であればどんな音楽でも体の緊張が解け、皮膚温が上昇し、筋肉の緊張度が低下すると報告されています。
自分の気持ちと同質の音楽を聴いて、気持ちを代弁してもらうことが大切であり、これを、「同質の原理」と呼んでいます。
その時の気持ちに合わせた音楽を聞くだけでもストレスの解消になりますが、初めはスローな曲を聴き、気分が回復してきたら次第に元気な曲に変えていくことで、落ち込みから少しずつ脱することができるという方法も効果的だといわれています。
ヒーリングミュージックや自分の好きな音楽を「聴く」ばかりがストレス解消ではありません。他にも音楽に関するストレス発散の方法はいろいろあります。
カラオケボックスで思いきり歌うのも一種の音楽療法です。
実際、音楽療法による治療では、幼児から高齢者まで幅広い年齢層に対し、楽器を使ってグループセッションしたり、歌を歌って体を動かすなどの方法が積極的に取り入れられています。
ギターでもピアノでも良いので、楽器を演奏するのも効果的です。
自分の好きな曲を好きなだけ歌いましょう。歌うことでお腹に力が入り、体も動かすことができ、体温も上がって前向きな気分になるでしょう。
癒し系の音楽は、一般的にはBGM的に使う方が多いと思いますが、脳の活性効果をねらうならば適当な音楽を流しっぱなしで聴くより、音楽療法用のCDを選び、ある期間集中して聴くことが大切です。
音楽療法用に作られたものでなければそのまま聴いてかまいません。
音楽療法用のCDの場合は周りの雑音を断ち切るためにもヘッドフォンの使用をお勧めします。イヤホンタイプではなく、耳を覆うタイプのものにしましょう。
効果の高い聴き方は、30分~1時間、毎日聴いて、その後間をあけます。
そしてまた毎日聴くようにし、その繰り返しを行います。一定期間集中して聴くと効果が高まります。
同じ音楽ばかりだと飽きてしまって効果も半減しますので、CDは数枚用意しましょう。
身近な音楽で、優れた癒し効果を得られるものでは、モーツァルトがおすすめです。
モーツァルトは、感覚的に脳を活性化する音を組み合わせて、癒しの音楽をつくることのできた数少ない天才の1人です。モーツァルトに代表されるクラシック音楽を聴くと頭が良くなる、と主張される効果は「モーツァルト効果」と呼ばれています。
モーツァルトの音楽のすごいところは、バイオリン等に代表される高周波音を多く含み、脳がさえた状態でリラクゼーションに導くことができることです。
さらに、モーツァルトの作品には、一定の安定したリズムが刻まれており、そのリズムは聴く人の生態リズムに呼応して、自律神経のバランスを取り、潜在能力を引き出します。
勉強や仕事の能率が悪くて悩んでいる人は、聴いてみると良いかもしれません。
来月のテーマは、「呼吸 ~ストレス解消法~」です。