神経症 ④環境反応について
神経症の分類とその症状
神経症には次の5つの典型的な病型があり、それぞれ特徴があります。
- 不安・神経症的な抑うつ状態
- 恐怖状態
- 脅迫、解離・転換状態
- 環境反応
- 妄想状態
それぞれ独立した症状でありながら、混合して現れたり、移行し合うこともあります。また、身体疾患に合併することもあります。
今回は、 4.環境反応 を詳しく見てみましょう。
知っておきたい病気の知識
耐えがたい心理的ストレスを受けた後は、心とからだの調子を崩してしまいがちです。それは、置かれた環境に対する正常な反応といえますが、精神的ショックが強い場合には、日常の生活や社会活動に支障をきたすことがあります。
A.急性ストレス障害
肉親の急死や災害など、大きな精神的ショックの直後に一時的の呆然自失となる状態です。不安感や落ち込み、イライラ、高揚した気分などが交錯して現れますが、特に目立つ症状として、あたかもその出来事を「忘れたがっている」「ないことのしたがっている」というような反応を示します。これは、その出来事があまりにも衝撃的で、その直後に直面するのが困難なためにこのような症状となります。
- 感情が麻痺してしまった、無くなってしまったと感じる。
- 現実感が湧いてこない。
- 障害の原因となった出来事が思い出せない。
- 周囲に注意が向かず、ボーッといている。
一方、
- 出来事がフラッシュバックしたり、夢に見ることもあり耐えがたい。
- 出来事を思い出してしまうような場面を必死になって避ける。
- 眠れない。ちょっとしたことでもびくびくしてしまう。
これらの症状は、出来事の現場から逃げられればすぐにでも消え、状況が好転しない場合であっても、2~3日で治まると言われています。
しかし、急性ストレス障害を経て、外見的には落ち着きを取り戻したように見えても、不幸の起きた当初より耐えがたい悲哀や空虚な気持ちがより一層切実になる適応障害になることもあり、さらには心的外傷後ストレスに進展することも少なくありません。
B.心的外傷後ストレス(PTSD:Post-Traumatic Stress Disorder)
災害や暴行、脅迫などの外傷的体験を伴う心理的ストレス(トラウマ)によって、数週間~数ヶ月以内にそのトラウマのフラッシュバックや夢の中での再体験を繰り返すことです。
- 症状
そのトラウマに関連する状況や会話を避けたり、その出来事の重要な部分を思い出せないこともあります。意欲が低下したり、感情の幅が狭くなったり、将来が長くないと感じることによって、日常生活に支障が出てきます。 また、神経が過敏となり、警戒心が強くなったり、イライラや怒りが爆発したり、気分が落ち着かなかったり、不眠が出現します。さらに、不安や抑うつは、これらの症状に伴ってさらに強くなるので、自殺を切望する気持ちを持ってしまうことも稀ではありません。
- よく発症する年代
小児期を含むどの年代でも起こり得ます。
- 治療
PTSDの治療は複雑です。カウンセリング、認知・行動療法、不安に対する対処法の訓練などの精神療法を中心に、薬物療法も行なわれています。 これらの治療によってPTSDの約半数は3ヵ月以内に完全に回復するといわれていますが、残りは精神的外傷を受けてから1年以上経っても症状が持続し、全体の30%程度が慢性化するという報告もあります。ですから、長期的な治療が必要です。
- 生活上のアドバイス
早期治療に予防が何よりも大切になります。一人で悩むのではなく、勇気を持ってまず家族に告げ、その後直ちに専門医に相談しましょう。 回復の目標は、「こころの傷を抱えながらも日常生活が送れるようになること」です。体験したことに少しずつでも自己肯定的な考えを持つようにすることが大切です。