生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
疲れは誰にでも起こる生理的な現象です。疲れた時は、休息、食事、運動、入浴などをしてぐっすり熟睡すると翌日には心身ともにスッキリして、回復します。
しかし、疲れが翌日以降に持ち越され、積み重なることによって慢性疲労が起こります。
症状には全身的なだるさのほか、微熱、脱力感、集中力や思考力がわかないなどの心理的な症状がみられることもあります。
慢性疲労の原因は、疾患によるもの、ストレスなどさまざまです。しかし、実は食生活の乱れも疲労感を助長させています。当然、食生活の乱れによって病気になることもあります。
今回は食生活の乱れの問題点を挙げ、疲労しにくい、食生活の提案をしたいと思います。
いつも朝食をとっている人は、起きる時刻になると自然に消化器の活動も高まって、食べた後も十分な消化液が分泌されます。そして食べ物が吸収されたあとは、インスリンの分泌が高まって、血中のブドウ糖が取り込まれ、細胞にとりこまれ、エネルギーとなります。
実際、朝食後には体温も心身の活動力も上がります。また、食べ物を噛む運動が脳の活動を高めます。こうして、脳やからだの細胞にエネルギーが補給され、1日の活動態勢が整うのです。
朝食を抜いても、起きて活動し始めればエネルギーの消費がはじまります。ところが、ブドウ糖は昨晩から補われていないので低血糖状態になりやすく、低血糖の時間が長引きます。これが「だるさ」につながります。
もう1つ、朝食には人の日内リズムを整える働きがあります。
日内リズムとは、たとえば、起きている間は活動や仕事に備えて、循環器や呼吸器のはたらきを活発にする交感神経が働きますが、寝ている間は逆に循環器や呼吸器は休めて消化器を活発にするよう、副交感神経が働くからだのリズムです。こうしたリズムに合わせて暮らしていけばあまり疲れませんが、リズムに逆行しようとすると、人の体はたいへん疲れやすくなるのです。
日内リズムを整えるのに重要なものは、日光と朝食です。海外旅行などで移動した場合に、からだを現地の生活時刻に早く合わせるためには、十分な朝日を浴びるとともに朝食を現地の食事時間に合わせてとることが大切です。つまり、朝食は日内リズムを整えてからだや精神を疲れにくくしてくれるのです。
また疲労感は、脳と密接な関連があります。疲労というと筋肉など身体面ばかり思い浮かべがちですが、からだは疲れていないはずなのに、だるくて眠い…ということはよくあります。これは脳が疲れているためです。脳は血液中の糖(グルコース)のみをエネルギーとしていますから、朝食抜きによる低血糖の影響は脳にとって非常に大きいのです。
朝食を抜いている人に多い習慣が、アルコールを飲みながら長い時間かけてだらだらと食事をする習慣や夜の遅い時刻に夕食をとることです。たとえ朝食を食べていてもこうした習慣は肥満を招きやすく、だるさや疲れの原因となります。
まず、アルコールを飲みながら長い時間食事をすると、たくさん食べ過ぎて翌日起きても食欲がなく、朝食が食べられないということになります。
それから夕食時間が遅い時刻にずれ込む人は、生活時間が不規則になっています。昼食と夕食の間が長すぎると低血糖の時間が長くなり、だるさ、つまり疲れを感じやすくなります。もちろん、遅い時刻にしっかり食べると、当然、翌日は食欲がおこりません。
さらに、夜中に飲んだり食べたりすれば、寝ている間に休んでいるはずの内臓や脳も活動しているのですから、疲労が十分に回復せず、翌日に持ち越されることになります。こうしたことが続くと肥満するとともに疲労しやすくなります。
同じものばかりを食べたり、偏食したりすると、特定の栄養素が不足し、だるさや疲労の原因となります。必要な栄養素をまんべんなくとることが重要です。ここでは特に不足すると疲労につながる栄養素について挙げましょう。
低血糖に陥らないように炭水化物を補う必要がありますが、摂取した炭水化物がエネルギーになるためにはビタミンB1が必要です。欠乏症になれば、だるく、疲れやすくなります。
また、カルシウムやマグネシウムのミネラルは、炭水化物の代謝に関与しています。これらの不足も原因の一部になります。
鉄分が不足している鉄欠乏性貧血の人は、体力がなく、疲れやすさを訴え、集中力や思考力も低下しがちです。
これは、全身に酸素を運搬する血液中のヘモグロビンの構成成分に鉄分が必要だからです。このため、鉄分が不足すると息切れ、めまいなどの症状が現れます。
ストレスが続く時は、たんぱく質とビタミンC、カルシウムをしっかり摂ることが重要です。たんぱく質は筋肉や臓器などの構成成分になるとともに、エネルギー源にもなりますから、不足すると全体的な体力や精神力のスタミナがなくなり、やる気や集中力がなくなります。
ストレスはビタミンCを消耗します。ストレスが生じると副腎皮質から抗ストレスホルモンが分泌され、血圧や血糖を上げてエネルギーを供給しようとします。このホルモンの生成にビタミンCが不可欠なため、しっかり摂取する必要があるのです。また、ビタミンCには鉄分の吸収をアップさせる作用もあります。
カルシウムは、神経の苛立ちを抑え、精神を安定させるほか、心筋を収縮させて心臓の拍出を規則的にします。そのためカルシウム不足はイライラや不整脈の原因になります。
ほうれん草 ……1把
卵 ……1個
塩、コショウ ……少々
ほうれん草をゆで、水にとって冷まし水気を絞って3cmくらいに切る。油で軽くいため、塩とこしょうで味付けする。
1人分用のココット型にほうれん草を入れ、中央をくぼませて卵1個を割りいれる。卵黄に竹串で突いて穴をあけ、ラップをかけ電子レンジ強(500W)に1人分に付き、1分20秒~1分30秒かけて加熱する。
来月のテーマは、「不眠 -クスリになる食材あれこれ-」です。