生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
日本の夏は湿度が高く熱帯夜が続くため、多くの人は睡眠不足になりがちです。また、暑さとジトジトした湿気によって食欲不振、疲れやすさ、だるさ、不眠などの不快な症状が起こります。特に、梅雨から初夏にかけては、からだが暑さに十分順応していないため、高湿度が疲れを増大させます。
私たちの体には、ホメオスタシスによってさまざまな機能を一定の状態に保とうとするはたらきがあります。
たとえば、暑い日には体温を一定に保つために発汗作用がはたらく、のどが乾いて水分を補給したくなるといったようなことです。
これは自律神経やホルモンなどが作用して環境の変化に適応できるようになっているのですが、ときには十分適応できない状態になることもあります。
暑さに負けて、からだの調子が悪い状態を夏ばてといいます。
夏ばて状態のとき、からだの中では何が起きているのでしょうか。
夏は暑さが厳しいため、体温調節を維持するために汗をかきやすくなります。すると、水に溶けやすいビタミンB1が不足してしまいます。体内に摂取された炭水化物はブドウ糖に分解され、肝臓でビタミンB1のはたらきによってからだを動かすエネルギーとなります。ところが、ビタミンB1が不足するとブドウ糖は疲労物質である乳酸となってしまい、その結果、夏ばてを引き起こすのです。
また、食欲がないために、食事量が減ってしまうと、ビタミンB1をしっかり補給することができず、さらに疲労感が増してしまいます。
「暑さに負けないために、何か食べないとからだによくない」と考えて、そうめんやひやむぎなど、のどごしのよい食事をしていませんか?このような食事は糖質の摂り過ぎとなり、糖質を体内でエネルギーに変えていく際のビタミンB1も多量に使われるようになるのです。つまり、元気をつけるための食事がまたビタミンB1不足を招くのです。
そうめんやひやむぎには、ビタミンB1を多く含むネギやニンニクなどを薬味として利用しましょう。これらに含まれるアリシンによってビタミンB1が体内に吸収されやすくなるのです。
たくさんの肉類を食べると、消化吸収の際に体温が上昇します。夕食の時間が遅いと、寝るまでの時間が短いため、布団に入っても体の芯が暑く、寝つきが悪かったり寝苦しくなってしまいます。
細胞は夜間に生まれ変わるので、夕食でたんぱく質をしっかりと摂る必要があります。ですから、夕食には魚や植物性のたんぱく質が豊富な豆腐などを中心に、肉類は添える程度が理想的です。また、朝食や昼食に肉類をしっかり摂るとよい。
のどの渇きを清涼飲料水で満たしてしまうと、その甘味がビタミンB1を不足させるだけではなく、食欲を減退させてしまうので、水分は水やお茶で補給しましょう。
ビールのおいしい季節に旬の食材である枝豆には、ビタミンB1が豊富に含まれる。また、枝豆のたんぱく質にはメチオニンにはアルコールの分解を助けて肝臓の負担を軽くするはたらきがある。
また、そら豆、落花生などもビタミンB1が多いのでおつまみに適しています。
梅雨があけて夏も本番となると、海水浴や山登り、夏祭り、花火大会など屋外での行動が多くなります。炎天下の中での活動は楽しくもあり、疲れやすくもあります。遊び疲れて帰ってきたときは、ご飯をつくるどころか食べることもせずにそのまま眠りたくなるものですが、食事を摂って消耗したビタミンB1を補給しましょう。
電車やデパート、オフィスも冷房をかけているところが多く、家庭であってもすべての部屋にクーラーを置いているようです。冷房のかけすぎも夏ばての原因となります。外との温度差を5度以内にするように心がけましょう。また、寝ているときは体温調節機能が十分にはたらきません。風邪をひいたりのどを痛めたりする原因となりかねないので寝苦しい夜に冷房をかけすぎてしまうことのないように注意してください。
夏のスタミナ源としてうなぎは有名ですが、土用の丑の日にうなぎを食べるのはなぜでしょうか。
「土用」とは、立春、立夏、立秋、立冬それぞれの前18日間のことで、その初めの日を「土用の入り」といいます。また、「丑の日」は十二支を1日ごとに割り当てていくので12日ごとに1度回ってきます。この18日のうちの丑の日を「土用の丑の日」と呼びます。(年によって土用の期間に丑の日が2回くることもあります)。
夏の土用の丑の日にうなぎを食べる風習は、幕末の学者平賀源内によるものだという有名な話がありますが、うなぎにはたんぱく質、脂肪、カルシウム、鉄、ビタミンA、ビタミンB1、B2が豊富に含まれているので、栄養学的にも理にかなっています。
今年の土用の丑の日は7月20日です。スタミナをつけて元気に夏をのりきりましょう。
来月のテーマは、「慢性疲労 -クスリになる食材あれこれ-」です。