健康管理情報

うつ病 -気になるからだの危険信号-

2002年5月号
更新)
気になるからだの危険信号

からだとこころ

からだの病気と聞くと心配したり気の毒に思うのに、こころの病気と聞くと遠ざけたりしがちなことはないですか。しかし、つらいことがあるとからだの病気になり、うれしいことがあるとからだの病気も回復したりします。つまり、こころとからだを切り離すことは難しく、からだの病気とこころの病気は密接につながっているのです。

軽症のうつ病は「こころのかぜ」とも呼ばれます。からだの病気と同じように、軽いうちに治療した方が治りやすいといわれます。原因はさまざまで、もって生まれた体質や性格的にかかりやすい人がいますし、環境や人間関係、職場の状況など外的な影響が大きい場合もあります。

チェックをしましょう

ストレスが心身の病気にならないためには、今、自分がどの程度のストレス状態にあるのかどうかを、早く客観的にみることが重要です。つぎのチェックをしてみましょう。

 

ストレスから由来するうつ気分のチェック

不眠には次のようにいくつかのパターンがあり、1人1人がいくつかのタイプを併せ持っていることも少なくありません。

  1. 疲れやすくだるい
  2. 朝早く目覚めて、眠れない
  3. 朝がとくに無気力だ
  4. 食欲がなく、何を食べてもまずい
  5. 息がつまって胸苦しくなる
  6. 自分は几帳面だと思う
  7. 生真面目で、融通がきかないほうだ
  8. 気持ちが落ち着かない、気持ちが落ち込みがちである
  9. 悲観的で涙もろくなった
  10. 会合に出席しても一人でいることが多い
  11. 自分に自信が持てない
  12. 自分の人生がつまらなく感じる

この数週間における心身の状態で、当てはまるものはいくつでしたか?
3個以下・・・問題なし。今のペースで続けていきましょう。
4個以上・・・ストレス予備軍。趣味などによる気分転換をはかりましょう。
8個以上・・・ストレス状態。休養を心がけましょう。

うつの症状

健康な人でも、疲れた時、二日酔いの時、カゼ気味の時などには、何かをするのがおっくうになることがあります。しかし、身体の具合さえ回復してしまえば消えてしまう一過性のものではなく、半月以上もそのような状態が続くとうつ病が疑われます。

主なうつ病の症状
気分の低下 ・もの悲しい
・落ち着かない
・不安感やイライラ
・絶望的になる憂うつ
・劣等感に悩む
・悲観的になる
・自殺したくなる
意欲の低下 ・ものごとがおっくうになる
・考えがまとまらない決断力に乏しくなる
・うちに閉じこもる
生命力の低下 ・食欲不振
・睡眠障害
・疲労感
・体重減少

うつ病の症状には、一日のうちでも変動があります。朝や午前中に強く現われ、夕方から夜にかけては比較的軽くなるのが特徴です。

このようなうつ症状は、ある日突然現われるわけではありません。徐々に進行し、気づいた時にはかなり悪化していることが多いのです。ですから、次の4つのタイプに当てはまる人は、注意しましょう。

うつ病になりやすいタイプ
執着型 ・きまじめ
・完全主義
・仕事熱心
A型(攻撃的) ・競争心が強い
・せっかち
・野心家
メランコリー親和型 ・人に頼まれるとイヤと言えない
・自分を責める
未熟型 ・情緒的に不安定
・自分自身を確立できていない

このような人が環境の変化にさらされた時、それがきっかけとなって発病するケースが目立ちます。

  • 仕事にのめりこんできた人が定年を迎えた
  • 働き盛りの人では、昇進や転勤など職場環境の変化
  • 熱心に育ててきた子供が独立した

これまでは男女ともに人生の節目を迎えた中年の方に多かったうつ病ですが、最近は、20~30代の若い女性の間で急増しています。

なかでも出産後にうつ病になる女性が多く見られます。よく言われる「育児ノイローゼ」のほとんどはうつ病と考えられます。この背景のひとつには、両親や親戚、友人など、子育ての相談をできる人が周りにいないために、ひとりで悩みを抱えてしまう人が多いことが挙げられます。

また、男女の社会的な役割が曖昧になり、女性の役割が増えると同時に、女性にとってもストレスが多い社会になったということです。

セルフケア

こんな心構えで過ごしましょう

 

  • 性格を変えることは簡単ではありませんが、「真面目で几帳面」「融通がきかない」などの性格を自覚していると、無理をしない、ストレスの原因を避けるなどの対処が可能になります。
  • 何事も完璧を目指すのではなく、「腹八分目がちょうどいい」と考えて頑張りすぎないことです。気持ちにゆとりを持ちましょう。
  • 一人で全てのことをこなそうとすると、能力以上のことを抱え込むこととなり、ストレスがたまります。一人で思い悩まずに、友人や家族など信頼できる人に相談してください。
  • 肩の力を抜いて、マイペースな生活を心がけ、また、全ての人に自分を理解してもらおう、なんて思わないようにしましょう。
  • 生活に大きな変化があった時は要注意。喜ばしい変化でも、うつ病の誘因になることがあります。忙しい時こそ、家族や友人と話す時間をつくり、意識してリラックスしましょう。
家族はどう対応したらよいか

うつ病は気の持ちようで治る病気ではありません。
頑張りたくても頑張れない、期待に答えることができないというのが、うつ病患者の悩みです。

「気分転換しなさいよ」「気の持ちようでよくなるよ」「もう少し頑張って」といった励ましは患者を追い詰めてしまうので禁物です。
ただ温かく見守ってあげることが何よりも励ましになるのです。

コラム・・・五月病

春になると、新生活をスタートさせる学生や社会人が多いですが、新しい環境に馴染めずに落ち込み、学業や仕事などに対して無気力になる五月病がみられます。これは退却神経症のひとつで、元来怠け者ではないのに、特別な理由もなく学業や仕事などに対して無気力になる病気です。

4月に入学、入社、転勤などで環境が変わり、五月ごろに症状が現われることが多いのでこの名前がつきました。いわば環境不適応症状を指す名称で、必ずしも五月に起こるものばかりではありません。非社交的な完全主義者に多くみられるようです。

来月のテーマは、「不眠 -気になるからだの危険信号-」です。