健康管理情報

出血 ~血便~ -気になるからだの危険信号-

2002年2月号
更新)
気になるからだの危険信号

血便が出る

血便は体が発しているシグナルですから、日頃から便の色にも注意して血便を見逃さないようにしましょう。

血便は色によって出血している部位が異なる
真赤な色の血が排便時に出るとか、便に混じるという症状がある場合

その原因の最も多いのが痔です。肛門部からの出血ですから、その血液は真赤な色をしています。

痔の中でも特に出血があるのは、内痔核や裂肛(切れ痔)です。

内痔核は肛門の内側の直腸粘膜上に静脈がうっ血していぼのようなふくらみができます。
そして排便時の刺激でぽたぽたと出血することがあります。
内痔核からの出血は持続性ではないのが特徴です。
従って排便時に血が出ることもあれば出ないこともある場合は、内痔核が疑われます。

(肛門付近の断面図です)

裂肛(切れ痔)は固い便が通過することによって肛門の一部に裂創ができたもので排便時に痛みを伴います。

(肛門付近の断面図です)

便に血が混じるという症状は、痔以外の病気によってもおこります。

大腸がん など重大な病気も考えられるので痔だから心配ないなどと自己診断し医師の診断を受けないのはたいへん危険です。

また、実際に内痔核だったとしてもその患者さんが同時にもっと重大な病気を抱えていることもあります。内痔核からの出血ががんの出血を見逃しやすくしまうこともあるのです。

こういったことを防ぐためにも、排便時の出血があったときには必ず肛門科や消化器科などで診察を受けましょう。

では、痔以外にはどんな病気があるのでしょうか?

消化器からの出血がある場合

消化器のどの部分で出血したかによって便に混じる血液の状態が違います。


 

赤い色の鮮血

肛門に近い大腸(下行結腸よりうしろ)で出血し、大腸がんや大腸ポリープ1などが考えられます。がん組織やポリープと接触しこすれて出血します。

色あせた黒っぽい血液

盲腸から横行結腸あたりで出血しています。前述と同じ可能性が考えられます。

有形便に血が混じる

大腸に炎症がおき、びらんや潰瘍ができ、粘血便(便に血液や粘液が混じったもの)をおこす潰瘍性大腸炎や、口腔から肛門までの全消化管をおかす炎症性疾患であるクローン病、大腸ポリープ(※1)、大腸憩室症(※2)などがあります。

※1大腸ポリープ
大腸の粘膜がいぼのようにとびだしたものです。ポリープには血管がたくさん集まっているので、腸の内容物や便にこすられてこれに傷がつくと、出血します。

※2大腸憩室症
大腸の内壁の一部が外側に向かってとびだし、袋状になったものです。普通は無症状ですが、憩室部に炎症や出血をおこし血便となります。


下痢便に血が混じる

サルモネラや腸炎ビブリオなどの食中毒によるもの、赤痢などによります。また、薬剤の使用で起こる薬剤性腸炎などでもおこります。

タール便

小腸から上で出血した場合には黒い色をした血便になります。鼻をつくような鋭い悪臭を放っているのが普通です。
真っ黒なタール便が出るということはかなり大量の出血があったことを意味しています。原因となる病気は食道静脈瘤(※3)、胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍(※4)などです。

※3食道静脈瘤とは
肝硬変などが原因で起こる病気で胃の噴門部と食道の静脈がしだいに拡張し、弱い部分が膨らんだ状態になったものです。
硬い食べ物を食べたり、せきをしたことが引き金になりその部分が破れて大出血を起こすことがあります。

食道静脈瘤が破裂して大出血が起こると確かにタール便が出ますが、この場合は口から血を吐くのが普通です。
かなり大量の血を吐くため非常に危険です。一刻も早く病院で処置を受けなければなりません。

※4胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍 に原因がある場合
胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍で真っ黒なタール便が出るときはかなり重症の可能性があります。

特に高齢者の胃潰瘍は血管の多い胃の後壁にできやすいので大量出血が起こることがあります。胃潰瘍や十二指腸潰瘍で大量出血した場合にも吐血が起こります。すぐに消化器科での治療を受ける必要があります。

またこれらの出血でも、少量の出血でしたら褐色になります。普通の便に近い色なので気づきにくいこともあります。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍などは、空腹時や夜中にしくしくと痛んだり、焼けるような痛みが起こります。

十二指腸潰瘍では、空腹時に背中が痛むこともあります。
胃がんでは、胃の不快感、痛み、胸やけ、食欲不振などが現れます。

特にこのような症状がある人は、日ごろから便の色に注意し、血便を見逃さないようにすることが大切です。

-注意-

タール便と似たものに、貧血の治療などに用いられる鉄剤やある種の下痢止め薬を服用したときに出る黒い色の便があります。
これは薬によって便が黒くなっていますので、血便ではありません。
薬による黒色の便にはタール便のような悪臭はありません。

早期発見・早期治療のために…便の検査へ

大腸がんなどの重大な病気の初期症状は無症状のことが多く、また血便が出ていても少量のため気づかないこともあります。早期発見・早期治療のためにも検査を受けましょう。

便の検査には、目にみえないような血液でも発見できる便潜血反応という検査があります。便に薬を混ぜて血液が含まれているかいないかを調べます。

普通、人間の血液中のヘモグロビン(赤血球に含まれ、酸素や炭酸ガスを運ぶ色素)だけに反応する薬を使用するので(免疫便潜血検査)、結果は正確です。
血便を証明されたときは再検査を勧められるはずですから、必ず受診しましょう。

早期発見、早期治療を行うために検査はかかせません。40~50歳代の人は少なくとも年に1回は便の検査をうけましょう。

来月のテーマは、「出血 ~不正出血~ -気になるからだの危険信号-」です。