生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
快食、快眠、快便は健康のバロメーターといわれているように、快適な排便は健康を維持するためのとても重要なポイントです。
便通異常の中でも特に多い便秘は、消化器の病気、食生活、運動、ストレスなど様々な問題が関わっています。
今回は、便秘の原因や改善方法などについて考えていきます。
便秘というと、「何日も続けて便が排出されない」状態であると思われている方が多いようですが、たとえ2~3日に1回でも快適な排便であれば便秘とはいいません。
便意が感じられずに排便できない状態、あるいは便意があっても排便できないのが便秘の症状です。
では人間はどのように便意を感じるのでしょうか?
胃袋に食物が入るとそれが刺激となって結腸が大蠕動(ぜんどう)運動をはじめます。すると腸にたまっていた内容物が直腸まで移動します。(胃結腸反射)
そして、直腸に便がたまると大脳に刺激が伝わり便意が生じるのです。(排便反射)
この排便反射で人間は排便を促されます。
便意を感じたときに排便しないことが習慣になると、直腸に便がたまっても便意を感じなくなる上に便はどんどん硬くなり、出にくくなってしまいます。
便秘が続くと、体にはどのような影響が現れるでしょうか?
便秘であるということは体内の老廃物が体に残るのでニキビや吹き出物ができやすくなったり、排便のときにいきむようになってしまうので痔になりやすくなってしまいます。
便秘に悩む人が多いことは忙しい現代人の生活が反映されています。
①三食きちんと食べていない
→便のもとになる十分な食事を摂っているでしょうか?
②便意があるのにトイレに行かない(行けない)
→便意を無視していると、便意を感じなくなってしまいます。
③野菜を十分に摂取していない
→食物繊維で腸のそうじをしていますか
④運動をしていない
→特に腹筋運動は腸を刺激して排便を促進します。
このうちひとつでも当てはまれば、便秘予備軍です!日ごろから便秘に注意しましょう
便秘には様々な原因と種類があります。
症状 | 腹部膨満感、もたれ感、胸やけなど。 腸内容の滞留時間が延長するため便が硬くなり便秘をもたらします。 内容物がうまく移送されずに停滞するので、水分が過剰に吸収されて便秘となります。 |
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原因 | 副交感神経の緊張が低下したり、食物繊維不足のため腸運動が減少し、横行結腸がたるんで蠕動運動が低下することにより起こります。
糖尿病や甲状腺機能低下症(※1)などで、大腸の運動や緊張が低下する場合もあります。 (※1 甲状腺機能低下症とは… |
特徴 | ・機能性便秘の中でも最も多い便秘の種類です。 ・老人や少食者(特に女性)に多くみられます。 ・硬く太い便が特徴です。 |
改善方法 | 下剤で改善するのではなく、食生活を見直しましょう。 ・食物繊維を十分に摂取しましょう。 →麦飯、黒パン、オートミール、れんこん、ごぼう、大根、人参、豆、いも、きのこ、海藻、果物には食物繊維が多く含まれます。・水分も多めに摂るよう心掛けましょう。 |
症状 | 左腹部、下腹部痛、ウサギの糞のようなコロコロした便、のぼせ、めまい、吐き気、不眠などがあります。 |
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原因 | 精神的に興奮していたり、旅行、転校、転勤などのストレスなどが原因で腸が過敏になってけいれんを起こし、腸内の内容物に移送が困難になってしまうことによる便秘です。
特に過敏性腸症候群(※2)によるものが多くみられます。 (※2 過敏性腸症候群とは… |
特徴 | 比較的若い人に多く見られます。 過敏性腸症候群の場合、神経質な性格、ストレスの多い職業に就いている人に多く見られます。 |
改善方法 | 過剰の野菜の摂取は禁物です。 豆腐、ヨーグルト、半熟卵、また、朝に冷たい牛乳を飲んだりするのもよいでしょう。 けいれん性便秘では、アトロピン系という腸管の緊張を和らげる薬に効果があります。 逆に使用してはいけない薬は腸の蠕動運動を高める下剤です。 |
症状 | 直腸に長時間糞便がとどまり、便が硬く出にくくなります。 |
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原因 | 直腸の中に便がたまっても、排便反射が全く起こらないために起こります。 ・浣腸の乱用・・・ 直腸の内圧を感じる受容体が鈍くなるためです。 ・痔などによる排便痛・・・ 痛みにより反射的に排便反射が抑えられたりなどし、排便反射の障害に原因があります。 ・加齢・・・ 排便反射が鈍くなることもありますので高齢者にも見られる便秘です。 |
特徴 | 便意を抑制する習慣のある人に多く見られます。 |
改善方法 | 原因となる要因を取り除くことで改善されます。 |
原因 | 腸の癒着、炎症、ガン、外からの外圧などにより腸が狭くなり、便やガスの通過を妨げることが原因です。 大腸がんや子宮・卵巣がんなどによることが多く、手術などを要することが多くなります。 |
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改善方法 | 大腸がんや子宮・卵巣がんなどの場合、慢性で徐々に悪化するという特徴が見られます。
特に大腸がんでは便に血が付着することもあるので注意しましょう。 |
原因 | 甲状腺機能低下などの内分泌疾患、脳腫瘍などの中枢神経疾患、糖尿病などの代謝異常によります。 |
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改善方法 | 各々の病気の治療によります。 |
※ 女性の場合、ホルモンの関係で生理前になると便秘ぎみになり、生理がはじまると逆に下痢気味になることもあります。
※ また、最近の傾向として、特に若い女性はダイエット志向で3食きちんと食べない人が増え、食べても少量などのため、排便の回数、一日における量も少なくなってきているといわれています。
病気や薬剤が原因の便秘は、まずその原因を取り除くあるいは改善することが前提ですが、一般的な便秘を防ぐために必要な要素は、「食事」・「生活環境」・「運動」です。
3食きちんと食べる、繊維質の多い食事と適度な水分を摂るように心がけましょう。
なぜ便秘に食物繊維がよいといわれるのでしょうか。それは、食物繊維は胃や腸では消化されず、そのまま腸へ運ばれ便の軟らかさを保ち、カサを増やす働きがあるからです。
一日に摂取したい十分量の食物繊維は30gです。
便意を我慢するという生活習慣は、一過性の便秘の大きな原因です。
何も入っていない胃に朝食が入ることで、排便の作用は一日の中で最も活発に行われます。朝食後がトイレに行く絶好の時間帯です。
一定の時刻に排便をする習慣をつけるといった排便のリズムはすぐにはできないことと思われますが、ゆったりとした気分で便秘を改善してゆきましょう。便意がなくともトイレに行くことから始めてみてください。
腹筋が弱いと腸の動きも鈍くなります。運動をすることで体が温まり、汗をかいたりするのは新陳代謝がよくなっている証拠ですが、便秘は新陳代謝が悪い状態なのですから、運動は効果的な便秘改善の一つでしょう。
特に縄跳びは、血行促進だけにとどまらず、飛び跳ねるという上下運動が腸に伝わり物理的にも便秘に効果的でしょう。
縄跳びがうまくできなかったり、怖いというような方はその場で飛び跳ねるだけでも効果は同様です。
注意することは下剤を用いての排便を習慣にしないようにすることです。自然な排便習慣が身につかなければ便秘からは解放されません。
それでも下剤の服用を考えている人はかかりつけの医師か、内科あるいは消化器科で一度診察を受けることをお勧めします。
単純な便秘と思っていても重い病気が潜んでいるときもあります。特に急性で腹痛を伴う便秘の場合には病院に行き診察を受けましょう。
来月のテーマは、「肩こり -気になるからだの危険信号-」です。