生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
40代前半から心身の不調を感じはじめている女性が少なくありません。近年では、男性にも似たような不調を感じている方もいます。今回は、身近な体の不調の『更年期の症状』をテーマに代表的な症状やしくみ、そして、症状との上手な付き合い方と意識して取り入れたい栄養素について解説をしていきます。
一般的に 女性は、50歳前後で閉経を迎えます。そして、‟更年期”とは、閉経の時期を挟んだ前後10年間の時期を指します。女性のライフステージにおいて、体に大きな変化が生じることで起こる症状を総称して「更年期症状(障害)」と呼ぶこともあります。更年期症状は、女性ホルモンの分泌量と密接に関わりがあり、個人差はあるものの心身に様々な不調が現れることがあります。
閉経にともない卵巣機能が低下し、女性ホルモンの「エストロゲン」の分泌が急激に減少することで起こることがあります。今までエストロゲンによって調整されていた心や体の様々な機能が上手く働かなくなります。そして、エストロゲンの低下を察知した脳は卵巣にエストロゲンを分泌するように指示を出します。ところが、機能低下した卵巣からは、十分なエストロゲンは分泌されず脳と卵巣での「指令」「応答」のアンバランスが起こり、自律神経の調整が上手くいかなくなると考えられています。それに加えて、加齢に伴う身体的変化、心理的因子、家庭や職場環境など社会的因子が複合的に影響して複雑な症状となるといわれています。
①精神神経系の症状(不眠、不安感、イライラ、うつなど)
更年期に不眠が増加する一因として、ほてりや発汗といった血管運動神経症状が夜間に起こることで睡眠が妨げられることが考えられています。また、不安や抑うつなどの精神症状にともなって不眠が生じたり、様々な心理社会的ストレスが原因となる場合もあります。その他、一般的に男性に多いとされる睡眠呼吸障害が閉経後の女性で増加していることも推察されています。
②血管運動神経系(ほてり、のぼせ、動悸息切れ、異常発汗など)
閉経前から多くなり、女性の約6割が経験するとも言われており、生活に支障をきたすほどに症状が重くなるのは約1割と考えられています。症状としては、2~3分持続するほてり感と発汗を自覚し、脈拍が増加します。ほてりや発汗は顔面のみ、あるいは、顔面から始まり頭部や胸部に広がります。エストロゲンの減少によって、血管の収縮や拡張をコントロールしている自律神経が乱れることによって起こります。
③循環器系の症状
目の前が暗くなるような感覚やふわっとなり意識が遠くなる立ちくらみの症状があります。このタイプの場合には、自律神経の乱れや不整脈、起立性低血圧、貧血、心不全など循環器系の異常による血流低下によって起こります。原因が分からず急に失神する場合には、循環器内科などに相談してください。
更年期をハツラツと過ごすためには、日々の生活習慣を意識してできるだけ健康的な生活を心掛けることが大切です。ここでは、ポイントをご紹介します。
更年期は、基礎代謝が低下し、生活習慣病などにかかりやすくなります。塩分を控え、ビタミンやカルシウムなどを意識し、食事のバランスを整えるようにしましょう。
疲労感を感じやすくなり、自律神経も乱れがちです。自律神経のリズムを整えるために、起床と就寝の時間、食事時間など基本的な生活時間を規則正しくしましょう。
★骨の代謝に関わる「カルシウムとビタミンD」
エストロゲンには、新しい骨を作る働きを進める働きがあるため、分泌が減少すると骨密度の低下を招き骨粗鬆症のリスクが高まります。骨の主成分カルシウムを意識的に摂るとイライラを鎮めたり、血液や筋肉の働きを良くしてくれます。その他、ビタミンDにはカルシウムの吸収を高めてくれる働きがあるため、カルシウムとセットで取り入れてみましょう。
★ホルモンに関わる「ビタミンEと亜鉛」
ビタミンEは、抗酸化作用を持つ脂溶性ビタミンですが、ホルモンの分泌を整える働きもあります。血流促進の働きがあるため、冷え性や肩こり、頭痛といった不調の緩和を期待できます。亜鉛は、ホルモンバランスを整える働きがあります。
<おすすめ食材>
ビタミンD:豚肉、鮭、きくらげなど
カルシウム:豆類、干しエビ、しらすなど
ビタミンE:ナッツ類(アーモンド)など
亜鉛:牡蠣、あさりなどの貝類、うなぎ、豆類
ご自身や周りの大切な方のために、健康管理の正しい知識を身につけて、健康で輝く未来を創りましょう♪
<下記のURLで概要をチェックしてみてください>
https://healthcare.or.jp/kenkokanrishitoha/
更年期症状は、女性のライフステージの中で体の大きな変化の過程です。生活習慣を意識しながら上手に付き合って少しでも快適に軽やかに更年期を過ごしましょう。症状がどうしてもつらい時は、無理はしすぎずに産婦人科や女性外来などを受診してみましょう。
来月のテーマは、「耳鳴り」です。