お知らせ・ニュース

学会参加報告 <日本糖尿病学会>

2021.09.21
学会関連

日本糖尿病学会 学術年次学術集会に参加いたしました

学会名 日本糖尿病学会
テーマ 日々の診療での気付きから新しい糖尿病学を切り拓く
日 程 2021年5月20日~22日
会 場 Web開催
報告内容

当協会が賛助会員として加盟しております「日本糖尿病学会」の学術集会がオンラインにて開催され、参加を致しました。

現在、糖尿病に関してどのようなテーマで研究が行われているのか、注目される内容を抜粋しご報告をさせて頂きます。

糖尿病における「腎臓病」のリスク

加齢と共に糖尿病の合併症を発症する人は増加しており、糖尿病の合併症である「神経障害」「腎症」「網膜症」は、70歳以上で各々20%ほどの方に併発していることが分かっている。 その中でも、糖尿病性腎症は透析導入の原因の第一位である。 2019年末 透析患者数:344,640名 (70歳以上:54.1%を占める)

加齢とともに慢性腎臓病の患者数は増え、特に70歳以上(女性)の半数は慢性腎臓病であるとされる。超高齢社会においては、今後も慢性腎臓病の患者数と透析患者の数が増えていくことが予想される。 慢性腎臓病になると、腎臓のろ過機能に異常が起きる。その結果、本来は尿として排泄させることのない「アルブミン(タンパク質)」が尿中に漏れ出す。しかし、近年ではアルブミン尿を伴わない、腎臓のろ過機能の低下が起こる症例がみられるようにもなってきた。

いずれにせよ、アルブミン尿の有無と程度が腎機能の予後を左右するため、定期的にアルブミンが漏れ出していないか尿検査を行うことが大変重要である。

「心腎連関」:腎臓が悪くなると心臓が悪くなる。心臓が悪くなると腎臓が悪くなるというキーワードがよく用いられていた。

高齢者糖尿病患者に対する
「認知症」のリスク低減方法

糖尿病患者は認知症(アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、軽度認知症)のリスクが上がることが分かっている。反対に低血糖でも認知症リスクが上がるため、糖尿病患者における薬剤治療の管理が必要である

栄養指導

高齢者の糖尿病患者については、成人期のメタボ及び肥満の是正⇒フレイル・サルコペニアの予防にシフトすることが重要である。フレイル・サルコペニアは、認知症との関連があるといわれているため、食事でタンパク質をしっかりとることが必要。

食事は、野菜や果物、ナッツ類などが豊富な地中海料理がおすすめである。また、乳類、豆類、野菜類、海藻類を多く含む食事をしている方に認知症の発症が少ないことが分かっているため、穀類中心ではなく、様々な食品から構成された多様性の高い食事が推奨される。

運動療法

認知症予防としては、エビデンスは十分ではないものの、中強度から高強度の運動を週3回以上、週に150分以上行うことが推奨されている。 有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせて、1回45分以上、週3回以上行うとよい。

社会参加

糖尿病患者において、余暇活動(知的活動、社会的活動、身体的活動など)少ないと認知症の発症リスクが上がる。友人や家族とコミュニケーションをとる。

高齢者糖尿病に対して、これらを個別に実施するよりも栄養・運動・社会参加など複合的に行う方がより効果的である。

「腸内環境」が及ぼす糖尿病への影響

腸は単に消化吸収を行っているわけではなく、様々な代謝産物を生み出す。 中でも、短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸など)や胆汁酸の代謝産物は腸内細菌でしか産生できないため腸内環境の恒常性の維持は重要である。

研究により、糖尿病患者や肥満症の人が短鎖脂肪酸を食前に摂取することで、食後の血糖値の上昇が緩やかになることが分かった。今後、短鎖脂肪酸を補充する治療法の可能性に展望がみられた。

しかし、糖尿病や肥満を誘導するような高脂肪食を摂取している場合、大腸における腸管バリア機能が低下することにより、エンドトキシンといった細菌の侵入にさらされやすくなることも分かった。

以上のように腸内環境が腸管バリア機能だけでなく、血糖値にも影響を与えていることが分かった。