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学会参加報告 <日本動脈硬化学会><日本健康教育学会>

2022.10.18
学会関連

日本動脈硬化学会・日本健康教育学会 学術年次学術集会に参加いたしました

~「日本動脈硬化学会」・「日本健康教育学会」年次学術大会より~

当協会では、生活習慣病や健康管理に関連する学会に加盟し、最新の学術情報を収集しています。今回は、2022年7~8月に開催されました「第54回 日本動脈硬化学会創設50周年記念大会」および「第30回 日本健康教育学会学術大会」の中から話題をご提供します。

学会名 日本動脈硬化学会
報告内容
がん患者における動脈硬化リスクの増加

がん治療の進歩とともに、「がん関連血栓症(CAT)」とよばれる動脈硬化の発症率が増加し、予後にも大きく影響を及ぼしている。がんという病態の特徴の一つに血栓の形成を来しやすいということがあり、患者管理における課題となっているが、がんの診断技術や治療薬の進化、また治療効果によって生存期間が延伸し患者の高齢化が進んでいることなどもあり、がん患者における動脈硬化リスクの増加を考慮せざるを得なくなっている。

CATの中でも、特にCTなどの画像診断の増加、あるいは分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などを使用した新しい治療法の登場によって、無症候性の動脈硬化(静脈血栓塞栓症:VTE)の発症率が、20年間に約3倍増えている。

がん患者は、非がんの人に比べてVTEを発症するリスクは約2.2倍であり、がんの診断後、約半年くらいで発症する率が高くなり、発症すると予後が悪く、全がん患者の死因においてがん死に次いで第2位となっている。中でも、肺・胃・すい臓がんでVTEの発症率が高いことが報告されている。

 

学会名 日本健康教育学会
報告内容
肥満患者および生活習慣に問題意識のある中高年の行動変容について(行動科学理論を用いた行動変容)

 肥満患者を対象に実施された行動科学理論を利用した1年間減量プログラムの研究報告がなされた。研究では、個人指導で対象者の食事や生活習慣に関する改善目標を立て、毎日の体重および歩数の測定、目標の達成状況などについてセルフモニタリングを行った。

減量プログラムに取り組んだ結果、介入群では平均体重減少量が有意に高くなっただけでなく、歩行数の増加がみられた。また、追跡調査の1年後も維持されていた。これには、対象者の健康課題と目標に対する達成感を見える化したことで得られた効果と考えられる。

さらに、別の行動変容につながった症例として、生活習慣の改善を希望する中高年を対象とした研究では、コンピューターによる生活習慣上の問題点の抽出を行い、それをもとに管理栄養士による6か月間のリモートサポートを実施したことにより、中等度以上の身体活動と10分以上の歩行の実行回数が増加する結果につながった。つまり、問題点の抽出後、定期的なサポートの実施により行動変容へつながったと考えられる。

野菜摂取量と労働生産性の関連性

昨今、企業や組織において、従業員の健康リスクが多くなるほど労働生産性が低下することが大きな経営課題として挙げられている。

今回の研究では、野菜の摂取量の充足度は、労働生産性と関連する指標としての可能性が示唆された。

対象者は、推定野菜摂取量をもとに、野菜の摂取の充足度によって2群に分けられた。野菜の摂取量が不足している群に比べ、充足している群においては、女性では健康問題を抱えて働いている(プレゼンティーイズム)割合は有意に低く、一方で男性は、プレゼンティーイズムとの関連性は明確にはならなかったものの、ヘルスリテラシーや幸福度も高いという結果が報告された。つまり、性差があるものの野菜の摂取量はプレゼンティーイズムをはじめとした労働生産性に関わる指標として関連している可能性が分かった。

食習慣を形成する食事環境および知識の関係性

成人の朝食欠食の要因に関する研究では、朝食摂取に対する意欲や自信の有無で3群に分けて実施されたがどの朝食欠食群にも共通して認められたことは、喫煙習慣が多いことや睡眠不足の人が多いという点であった。また、食事に関する知識が不足している、あるいは、生活リズムのズレなどにより共食を共にする家族などがいないことが関係していることが研究によってわかった。