公益財団法人 日本対がん協会 理事長 梅田 正行様との対談が行われました!
2022.08.09~「がん」の早期発見と予防の大切さ ~健康管理士の果たす役割~
日本対がん協会様では、日ごろよりがん征圧の活動を通じて「がんになっても希望をもって暮らせる社会」を築くために幅広い活動をされています。
この度、ピンクリボン運動でもおなじみの、公益財団法人 日本対がん協会の理事長 梅田正行様と、健康社会実現のための活動を行う私共、特定非営利活動法人 日本成人病予防協会の理事長 佐野 虎(たけし)による対談が実現いたしました。
がんの現状
佐野)私共は健康社会実現のために生活習慣病予防全般の知識の普及啓発を行っておりますが、その中でも日本人の死因第一位であるがんについては大きく取り扱っております。近年のがんを取り巻く状況はいかがでしょうか?
梅田理事長)ご存じかとも思いますが、がんは39年連続して死因のトップであります。2020年にがんで亡くなった人は37万8000人あまりで、死因第二位の心疾患(約20万5000人)と比べると2倍近くいらっしゃいます。
佐野)がんや心疾患が死因の上位を占めていることは知られていても、そこまでがんの死亡数が際立って高いことは、現状まだまだ認知されている方は少ないかもしれませんね。
がんに罹患する方も増えていると思いますが現状はいかがですか?
梅田理事長)この40年間でがんと診断された方の人数は約5倍にまで増え続け、近年は毎年約100万人、人口の10人に1人弱ががんと診断されています。
そして、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は2人に1人と推計されます。
ですが、このような現状を知らずに自分事だと思えないでいる人々がまだまだ多いのが現状です。
~がんと共存する時代に~
佐野)そうですよね。「万が一がんになったら・・・」と考えている方が多いのかもしれませんが、がんは万が一の病気ではなく、とても身近な病気ですよね。
私どももこうしたことをもっと広めていかなくてはいけないと考えています。
梅田理事長)がんにまつわる話題として、検査の精度が進歩したことも多くの人に知っていただきたいと思っています。
がんの診断数が増加しているということは、裏を返すとがんだと分からなかった人が分かるようになったということですから。
佐野)なるほど、確かにそうですね。検査の精度がどんどん進歩していけば、がんを診断されたとしても早期発見で見つかるケースが増えることになりますね。
治療についてはいかがでしょうか。
梅田理事長)治療についても技術は年々進歩しています。
一つのデータをご紹介しますと、2009年~2011年にがんと診断された人の5年生存率は64%でして、かつてに比べて大きく伸びているのです。
さらに、長期の生存率をみる指標でも医療の進歩の甲斐あって伸び続けています。 その結果、現在では就労と治療を両立している方も多数おられます。
かつて、がんは「死に至る病気」として恐れられていましたが、これからは「治る病気」「治す病気」として向き合うことができる病気であるのです。
佐野)がん患者の方も普通に働き、がんと共存することが当たり前な時代になっているわけですよね。
そうすると、やはり企業側、雇用する側ががんについての知識をもち、理解を深め、どう関わっていくのかを考えることがとても重要になります。多くの方ががんと共存しながら働けているという社会的認識、そして企業の対応力が求められていると思います。
~早期発見・早期治療の大切さ~
梅田理事長)まずは企業側でがん検診の受診率を上げていくことが大切です。がん検診は強制ではなくオプションになるので、そこを企業としてどこまで重要視するかが問題です。
このことは早期発見、早期治療に大きく関わってきます。
佐野)早く見つけることができれば、社会復帰も早くなりますよね。
通常、がんはある程度の大きさになるまで自覚症状を伴わないですから、検診を受けないことには早期発見は難しいですよね。
医療技術が進歩している現代だからこそ、早期発見、早期治療によりがんと向き合いながら生活の質を維持できる患者さんを増やしていくことが今後の日本の課題ですよね。
梅田理事長)検診については、レントゲンを積んだ巡回バスを使って集団検診をしたりなど色々と工夫もしているのですが、企業任せで検診を受けていた方が定年後には受けなくなってしまうことがあったり、経済的な面で気が進まなくなったりなど、検診に対する意識が中々高まらない現状もあります。
自治体の補助など受けやすい制度も整っているので、そういうことを周知していくことも課題かと思っています。
佐野)がんについて正しく知ることができれば、自分も罹患するかもしれないという自覚を持って検診にいく人も増えるかと思います。
梅田理事長)そこも重要ですね。現状では、日本のがん検診の受診率は、厚生労働省が掲げている50%の目標に対して男性の肺がん検診以外は到達していない状況です。
欧米では受診率が70%台と言われておりますので、日本はまだまだだなと感じています。
~がん予防の大切さ・健康管理士の果たす役割~
佐野)我々はがんをはじめとする生活習慣病予防全般の知識を多くの方に普及啓発する活動をしておりますが、やはりまだまだ病気や健康のことを学ぶ機会が少ないということを感じています。
梅田理事長)私も同感です。がん教育というものが、学校や働く世代に対して十分でないことは大きな課題だと思います。
佐野)健康に関することを学生時代から特別に学んだりしていませんよね。
健康に関して何も知らないまま不規則で乱れた現代社会を生きていくと、10年くらいで身体に大きな影響が出るかと思います。
10年間の食事は1万回になるわけですしその積み重ねが身体をつくるので、食を選択する知識や病気のリスクを知ることがまずは必要だと思います。
梅田理事長)知識をもつと意識や行動も変わりますからね。
知ることで少しでも生活を変えることができれば、がんも予防していくことができます。
健康に関して学習する機会、啓発する機会が必要だと私共も感じます。
佐野)他の生活習慣病の有無もがんの治療に関わるかと思います。
まずは自分の生活習慣が引き起こす生活習慣病を知り予防すること、そしてがんを予防することとつなげることが重要であると思います。
梅田理事長)仰る通りですね。
他の生活習慣病が治療の邪魔をしますから生活習慣病の予防もとても大切です。
佐野)私共は地域、企業、医療福祉、学校、家庭と様々なフィールドで健康の大切さを伝える担い手として健康管理士の育成を30年続けてきたのですが、今回改めて、がんを含めた生活習慣病予防の普及を健康管理士の皆さまと一緒にさらに広げていくことが必要だと感じました。
梅田理事長)健康の知識を学んで予防に対する高い意識をもつ方を育成される活動はとても素晴らしいと思います。
皆様方には、ぜひがん予防の普及についてもご尽力いただきたいですね。
佐野)ありがとうございます。
健康管理士の方々には、医師とは違った目線に立ち、がんを身近な話題として周囲の方々に伝える役割を担っていただきたいと思っています。そのために、がんに関する知識や予防方法等の情報をブラッシュアップする機会も増やしていくようにしていきたいと思います。
今後とも正しい知識や情報を世の中に広めて健康社会を創っていく活動でぜひご一緒できましたら幸いです。
梅田理事長)こちらこそどうぞ宜しくお願い致します。学びも含めて、検診や予防活動が多くの方の生活に根付いたものとなるようにしていきましょう。
佐野)ぜひそういたしましょう。本日はありがとうございました。
(左:日本対がん協会 理事長 梅田正行様 右:日本成人病予防協会 理事長 佐野虎)
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