生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
ふるえとは知覚と運動という2つの機能をもつ神経のうち、運動神経のほうに異常が生じるために起こる病気です。運動神経が阻害された場合は麻痺してしまいます。
ふるえには2種類あります。
1つは寒さにあったときに起こるふるえで、からだを伸ばすときに使う筋肉(伸筋)群と、からだを曲げるときに使う筋肉(屈筋群)が同時に収縮(縮む)するのが原因です。医学では、このふるえを戦慄といいます。
もう1つは、伸筋と屈筋が交互に収縮するためのふるえで、医学では、振戦といいます。
手足にふるえを感じたときに、以下の点に注意してください。
ふるえる時間、特徴などにより原因となるものを特定するために役立ちます。
診察を受ける際に担当医に伝えましょう。
振戦のなかで頻度が高いのは、パーキンソン病で見られる「パーキンソン振戦」、原因のわからない「本態性振戦」、肝性脳症、ウィルソン病などの肝臓病、尿毒症でみられる「羽ばたき振戦」、甲状腺機能亢進症でみられる「代謝性振戦」、アルコール依存症などでみられる「中毒振戦」、不安や恐怖などの心理的な誘因や寒冷などからおこる「生理的振戦」などです。
「赤核振戦」という中脳の障害でおこるもあります。比較的遅い、大きなふるえでなにか動作をしようとしたときにおこることが多いものです。
脳幹部の黒質という部分が損傷を受け、黒質でつくられるドーパミンという物質の量が減り、バランスを崩し起こる病気です。
ふるえは、規則正しい、小刻みな動きです。1秒間に5~6回ふるえます。手のふるえによって気づくことが多いものです。
このようなふるえは、動いているときよりもむしろ、椅子に腰掛けて膝に手をおき、じっとしているときにおこりやすいものです。字を書くと小さい字しか書けなくなったり、声が小さくなるなどの症状もあらわれ、筋肉が硬直していきます。
50歳以上の人にみられるふるえです。
からだのどこにでもおこりますが、通常は、片側の手、ついで腕、反対側の手、腕と伝わっていくことが多いようです。発症に男女差はありません。
原因は不明ですが、血のつながった家族にも同じ症状の人がいるケースがあるので、遺伝性の要素があるのかもしれません。
気をつけなければならないのは、脳の血管の動脈硬化や脳の老人性萎縮などが起こりやすくなっているということなので、異常がおこれば、すぐに神経内科の専門医の診察が必要ですが、必ずしも病気が認められるとは限りません。
※脳の血管の動脈硬化や脳の老人性萎縮…
動脈硬化は脳卒中を起こしやすくする要因の1つです。
脳卒中では前ぶれ発作として、手足のしびれやふるえがおこることがあります。また、脳の萎縮は老化によって脳が小さくなってしまうことです。
このときもふるえなどの症状がおこります。ともに見すごしてしまうと脳卒中の場合は大きな発作を、老人性萎縮では重度の痴呆症を引き起こします。
手を前方に伸ばしたときに鳥が羽ばたくように手がふるえる羽ばたき振戦と呼ばれる症状をみせます。
アルコールは依存を起こしやすい物質で、繰り返し乱用してやめられなくなることをアルコール依存症といいます。初期症状で、細かい手のふるえをおこします。その後、さまざまな精神的・肉体的な症状をおこします。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう病気です。手足のふるえの他に脈が速くなったり、発汗、眼球突出などがあります。
目的を遂げようとすると、ふるえがひどくなって遂げられない振戦です。
たとえば、水を飲もうとしてコップを口に近づけるほど手のふるえがひどくなり、水をこぼしたりします。小脳や結合組織の異常でおこります。
筋肉の疲労、不安、恐怖などの心理的な誘因や寒冷などで起こる細かく速い手のふるえです。寒いときはどなたも経験する振戦です。これを病気と考えて悩むことはありません。
ふるえを感じたら、原因となる病気にあわせた治療が必要ですから、治療をしなくてはならない疾患を早く区別することが肝心です。
大きな病気がふるえを引き起こしていることもあるので症状を感じたら速やかに神経内科、内科、内分泌科、老人科など専門医の診察を受けましょう。
来月のテーマは、「出血 ~湿疹・じんましん~ -気になるからだの危険信号-」です。